サルコペニアとは

年齢とともに、筋肉の量と、筋肉の力が、どちらも落ちた状態をサルコペニアと呼びます1。日本の標準的な病名の一覧にも載っている、れっきとした病名です2。

病名がついているのは、放っておくと困ることがあるからです。サルコペニアの人は、転びやすく、骨折しやすく、介護が必要になりやすいことがわかっています345。

一方で、運動と食事で手当てができます。「年のせいだから仕方ない」とあきらめる必要はありません。

めずらしいことではありません

日本の地域で暮らす65歳以上の調査では、男性の約9人に1人、女性の約6人に1人がサルコペニアでした3。

2025年に、見つけ方が変わりました

アジアの専門家グループ(AWGS)が、2025年に基準を改めました1。日本の学会も、この新しい基準を使うよう呼びかけています6。

2025年に変わったことアジアのサルコペニア基準(AWGS)

2019年2025年
診断に使うもの筋肉の量+握力または歩く速さなど筋肉の量+握力
歩く速さ・立⁠ち⁠上⁠がり診断に使う運動の効果を確かめる物差し
対象の年齢60歳または65歳から50〜64歳にも目安
重症度「重症」の区分あり区分をなくした
出典:Chen LK, et al. Nat Aging 2025;5:2164-75(AWGS 2025)Table 1/日本サルコペニア・フレイル学会 2025年12月5日

大きく変わったのは2つです。

  1. 診断は「筋肉の量」と「握力」の2つで決めます。 歩く速さや、椅子から立⁠ち⁠上⁠がる速さは、診断からは外れました。これらは、運動の効果を確かめる物差しになりました16。
  2. 50〜64歳にも、目安ができました。 筋肉の健康は、50歳から考えるものになりました1。

握力は、40歳ごろから少しずつ落ち始めます7。50歳からの筋肉づくりは、早すぎることはありません。

見つけ方の流れ

サルコペニアの見つけ方アジアの基準(AWGS 2025)から

段階することわかること
1 気づく指輪っかテスト・5つの質問・ふくらはぎの太さ筋肉が減っているかもしれない
2 握力を測る家でも、健診でも測れる目安を下回れば「サルコペニアの可能性」
3 筋肉の量を測る医療機関の専用の機器で握力と筋肉の量が、どちらも低ければサルコペニア

握力が目安の範囲でも、気⁠に⁠な⁠る病気がある人は、年に1回は握力を測りましょう。

出典:Chen LK, et al. Nat Aging 2025;5:2164-75(AWGS 2025)Fig.2

握力は、家でも測れます。年齢と性別ごとの目安は、いまの筋力を、家で測るで確かめられます。

握力が目安を下回ったら、「サルコペニアの可能性がある」段階です。病名が決まるわけではありません。筋肉の量を測ってもらう合図です1。筋肉の量は、医療機関にある専用の機器で測ります。

自分で気づく方法:指輪っかテスト

日本で生まれた、道具のいらない方法です8。2025年の基準にも取り入れられました1。

  1. 椅子に座り、足の裏を床につけます。
  2. 両手の親指どうし、人さし指どうしを合わせて、輪をつくります。
  3. 利き足でないほうの、ふくらはぎのいちばん太いところを、その輪で囲みます。

指輪っかテストの見方ふくらはぎのいちばん太いところを、両手の輪で囲む

結果意味
囲めない筋肉は保たれている
ちょうど囲める少し注意
すき間ができる筋肉が減っているかもしれない。握力を測ってみる
出典:Tanaka T, et al. Geriatr Gerontol Int 2018;18:224-232

すき間ができる人は、筋肉が減っているかもしれません。握力を測ってみましょう8。

ほかに、「重い物を運ぶ」「階段を上る」などが、どのくらいたいへんかを答える、5つの質問(SARC-F)もあります9。

手当ての柱は、筋トレとたんぱく質

サルコペニアに、承認された飲み薬はまだありません19。手当ての柱は、次の2つです。

腎臓の病気で、たんぱく質を控えるよう言われている人は、量を増やす前に主治医に相談してください。

体重は変わらないのに、筋肉が減って脂肪が増えることもあります(サルコペニア肥満)1。やせている人だけの話ではありません。

こんなときは、かかりつけ医に相談を

  • 握力が、目安を下回った
  • この6か月で、2kg以上、意図せず体重が減った
  • 転ぶことが増えた
  • 飲み込みにくくなった
  • 入院や大きな病気のあと、体力が戻らない

心臓・肺・腎臓の病気や、糖尿病のある人は、筋肉が落ちやすいことがわかっています1。

まずはかかりつけ医に相談し、必要なら、筋肉の量を測れる医療機関を紹介してもらいましょう。

こんなときは、すぐに受診を

  • 片方の腕や脚だけ、力が入らない、細くなってきた
  • 数日から数週間のうちに、急に力が入らなくなった
  • しびれを伴う

これは年齢による筋肉の衰えではなく、神経の病気のことがあります。脊椎外科医として、見逃してほしくないサインです。