信州大学で生まれた歩き方
インターバル速歩は、信州大学の能勢博さん、増木静江さんらが考えた歩き方です12。
2025年には海外で「ジャパニーズ・ウォーキング(日本式の歩き方)」と呼ばれ、話題になりました3。けれども中身は、20年近く前から日本で研究されてきた方法です。
やり方は「3分速く、3分ゆっくり」
3分速く、3分ゆっくりを5回速く歩く合計が1日15分。週4日で週60分
| 速く(さっさか歩き) | ゆっくり | |
|---|---|---|
| 1回目 | 3分 | 3分 |
| 2回目 | 3分 | 3分 |
| 3回目 | 3分 | 3分 |
| 4回目 | 3分 | 3分 |
| 5回目 | 3分 | 3分 |
| 合計 | 15分 | 15分 |
3分がきつければ2分でかまいません。初めの2週間は1〜2分・「ややきつい」までから。
- 速く歩く(さっさか歩き)を3分:「ややきつい」から「きつい」の手前。話はできるけれど、会話を続けるのはつらいくらい。息が弾み、少し汗ばみます45。
- ゆっくり歩くを3分:息を整えます。
- これを5回くり返します。速く歩く時間の合計が、1日15分になります。
- 週4日以上。速く歩く時間の合計が、週60分になれば十分です5。
3分続けるのがきつければ、2分でかまいません5。
国は、働く世代に「息が弾み汗をかく程度の運動を、週60分以上」を勧めています4。インターバル速歩は、その目安を満たすやり方の一つです。国のガイドが、この方法を名指しで勧めているわけではありません。
ふつうに長く歩くより、脚の力と持久力が伸びた
信州大学の研究では、中高年の人が5か月間、インターバル速歩を続けました。ふつうの速さで1日8,000歩以上歩いた人と比べて、太ももの力と持久力が伸び、血圧も下がりました1。
5か月後、何が変わったか信州大学・中高年246人の研究
| インターバル速歩 | ふつうの速さで 1日8,000歩以上 | |
|---|---|---|
| 膝を伸ばす力 | +13% | ほぼ変わらず |
| 膝を曲げる力 | +17% | わずか |
| 持久力 | +9% | 増えず |
| 上の血圧 | −9 mmHg | −3 mmHg ほど |
決められた量を続けられた人だけの比較です(インターバル速歩の人は、始めた人の約半分)。別の大学の試験では、膝を伸ばす力の差は出ませんでした。
ただし、これは決められた量を続けられた人だけを比べた結果です。インターバル速歩の人たちは、始めた人の約半分でした1。その分、結果は良く出ている可能性があります。別の大学の試験では、太ももの力の伸びに、ふつうの歩き方との差が出なかったこともあります6。
効いていたのは、速く歩いた時間
約700人のデータを調べると、体力や生活習慣病の指標が良くなるかどうかを決めていたのは、速く歩いた時間でした2。
速く歩く時間が週50分くらいまでは、長いほど良くなり、そこから先はほぼ同じでした。ゆっくり歩いた時間や、歩いた合計の時間とは、関係がありませんでした2。
たくさん歩いている人も、その一部を「速く」に変えると、中身が濃くなります。
1日1万歩でなくていい
国の目安は、働く世代で1日約8,000歩です4。
海外の研究をまとめた大きな解析では、1日7,000歩前後までで、病気や死亡の危険が下がる分の大部分が見られました。その先の上積みは、小さくなります78。
1万歩でなくていい1日2,000歩の人と比べた、死亡の危険の下がり方
| 1日の歩数 | 死亡の危険 |
|---|---|
| 4,000歩 | 36% 低い |
| 7,000歩 | 47% 低い |
| 10,000歩 | 48% 低い |
| 12,000歩 | 55% 低い |
7,000歩を超えると、上積みは小さくなります。国の目安は、働く世代で1日約8,000歩です。観察研究のまとめで、歩数だけの効果とは限りません。
1万歩でなくても大丈夫。7,000〜8,000歩あたりが目安です。インターバル速歩は、歩数を増やすのとは別の足し方です。いつもの歩数の中の一部を、速く歩きます。
「やせる歩き方」ではない
海外では「やせる」と紹介されることもありました。けれども、もとの日本の研究では、体重の変化は小さく、ふつうに歩いた人と差はありませんでした1。体重が大きく減った海外の試験は、週5時間歩いています9。
また、インターバル速歩が病気や寿命を変えるかどうかは、まだ調べられていません10。
海外の流行と、研究でわかっていること「ジャパニーズ・ウォーキング」の話
| 流行で言われたこと | 研究でわかっていること |
|---|---|
| 日本式の歩き方 | 信州大学で考えられた「インターバル速歩」。日本ではこの呼び名は使われていない |
| やせる | 日本の研究では体重の変化は小さかった。大きく減った試験は週5時間歩いていた |
| 1万歩より効く | 比べた相手は「1日8,000歩以上」。比べたのは脚の力・持久力・血圧 |
| 大事なのは30分歩くこと | 効いていたのは、速く歩いた時間(週50〜60分) |
| 長生きできる | 病気や寿命への効果は、まだ調べられていない |
筋トレの代わりではない
太ももの力が伸びたとはいえ、インターバル速歩は筋トレの代わりではありません。国の目安は、歩くことに加えて、筋トレを週2〜3日です4。
インターバル速歩は、「歩く」の中身を濃くするもの。筋トレは別に続けましょう。家でできる筋トレは、50歳からの筋トレ、週2回からにあります。
通勤の行き帰りで
ここからは、整形外科医としての提案です。
- 駅までの道で、3分速く・3分ゆっくりを2〜3回。帰り道でも同じように。行き帰りを合わせて、1日の速歩を積み上げます。
- 昼休みの15〜20分を使う。
- 平日が忙しい週は、週末にまとめて。速く歩く合計が週60分になればかまいません5。
- 時計は、スマホのタイマーで十分です。
- 信号や人混みで、3分ぴったりにならなくても気にしなくて大丈夫です。人の多い場所や駅の階段では、無理に速くしません。
朝でも夜でも、続けやすい時間で行いましょう。
座りっぱなしを区切ることとは別のものです。区切り方は、座りっぱなしは、30分ごとに区切るにあります。
歩き方のコツ
膝や腰が痛いときは
膝や腰が痛いときも、目安は膝や腰が痛いときの、動き方と同じ、信号の3色です。
- 青:痛くない、またはほとんど気にならない。そのまま続けます。
- 黄:少し痛むが、翌朝には、いつもの痛みに戻っている。同じ量で続けるか、速く歩く時間を短くします。
- 赤:歩いている間に痛みが強くなる。翌日も痛みが増えたまま。膝が腫れる、熱っぽい。速く歩くのはやめて、ふつうの速さに戻します。
赤が数日たっても引かないときは、受診してください。
膝がつらい人は、歩幅を大きくするより、歩くテンポを上げて速くしましょう。上り坂も避けます。
歩くと脚がしびれたり痛んだりして、休むと楽になる方は、脊柱管狭窄症のことがあります。先に脊柱管狭窄症と運動をお読みください。
始める前に、やめるとき
速く歩くのは、「中くらい〜強め」の運動です。慣れない人が急に強い運動をすると、体の不調が起きやすくなります4。
始める前に、主治医に相談してほしい方
- 心臓の病気や高い血圧で、運動を止められている
- 胸が痛くなることがある
- めまいでふらつく。この1年に気を失ったことがある
- 糖尿病の治療中(特に、インスリンや血糖を下げる薬を使っている)
- 運動で悪くなりそうな、骨や関節の病気がある
健診で血圧が180/110以上と言われた方は、先に受診して整えてから始めましょう。その日の血圧が160/100以上なら、速く歩くのはやめて、散歩程度にします4。血圧の薬を飲んでいる方は、脈ではなく「きつさ」で強さを判断してください4。
すぐにやめるとき
胸の痛み、動悸、めまいやふらつき、冷や汗、いつもと違う強い疲れ、関節や筋肉の強い痛みが出たら、すぐにやめましょう4。
翌日の仕事に響くほど疲れるなら、やりすぎです4。
暑い日
暑い日は、朝や夕方に回すか、休みます。暑さ指数や熱中症警報を確かめましょう11。研究でも、夏は続けられる日が大きく減りました12。水は、のどが渇く前に少しずつ飲みます5。