信州大学で生まれた歩き方

インターバル速歩は、信州大学の能勢博さん、増木静江さんらが考えた歩き方です12。

2025年には海外で「ジャパニーズ・ウォーキング(日本式の歩き方)」と呼ばれ、話題になりました3。けれども中身は、20年近く前から日本で研究されてきた方⁠法です。

やり方は「3分速く、3分ゆっくり」

3分速く、3分ゆっくりを5回速く歩く合計が1日15分。週4日で週60分

速く(さっさか歩き)ゆっくり
1回目3分3分
2回目3分3分
3回目3分3分
4回目3分3分
5回目3分3分
合計15分15分

3分がきつければ2分でかまいません。初めの2週間は1〜2分・「ややきつい」までから。

出典:NPO法人 熟年体育大学リサーチセンター「インターバル速歩とは?」/Nemoto K, et al. Mayo Clin Proc 2007/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
  • 速く歩く(さっさか歩き)を3分:「ややきつい」から「きつい」の手前。話はできるけれど、会話を続けるのはつらいくらい。息が弾み、少⁠し⁠汗⁠ば⁠みます45。
  • ゆっくり歩くを3分:息を整えます。
  • これを5回くり返します。速く歩く時間の合計が、1日15分になります。
  • 週4日以上。速く歩く時間の合計が、週60分になれば十分です5。

3分続けるのがきつければ、2分でかまいません5。

国は、働く世代に「息が弾み汗をかく程度の運動を、週60分以上」を勧めています4。インターバル速歩は、その目安を満たすやり方の一つです。国のガイドが、この方⁠法を名指しで勧めているわけではありません。

ふつうに長く歩くより、脚の力と持久力が伸びた

信州大学の研究では、中⁠高⁠年の人が5か月間、インターバル速歩を続けました。ふつうの速さで1日8,000歩以上歩いた人と比べて、太ももの力と持久力が伸び、血圧も下がりました1。

5か月後、何が変わったか信州大学・中⁠高⁠年246人の研究

インターバル速歩ふつうの速さで 1日8,000歩以上
膝を伸ばす力+13%ほぼ変わらず
膝を曲げる力+17%わずか
持久力+9%増えず
上の血圧−9 mmHg−3 mmHg ほど

決められた量を続けられた人だけの比較です(インターバル速歩の人は、始めた人の約半分)。別の大学の試験では、膝を伸ばす力の差は出ませんでした。

出典:Nemoto K, et al. Mayo Clin Proc 2007;82:803-11(本文・表4)/Ichihara Y, et al. J Diabetes Investig 2025;16:646-55

ただし、これは決められた量を続けられた人だけを比べた結果です。インターバル速歩の人たちは、始めた人の約半分でした1。その分、結果は良く出ている可能性があります。別の大学の試験では、太ももの力の伸びに、ふつうの歩き方との差が出なかったこともあります6。

効いていたのは、速く歩いた時間

約700人のデータを調べると、体力や生活習慣病の指標が良くなるかどうかを決めていたのは、速く歩いた時間でした2。

速く歩く時間が週50分くらいまでは、長いほど良くなり、そこから先はほぼ同じでした。ゆっくり歩いた時間や、歩いた合計の時間とは、関係がありませんでした2。

たくさん歩いている人も、その一部を「速く」に変えると、中身が濃くなります。

1日1万歩でなくていい

国の目安は、働く世代で1日約8,000歩です4。

海外の研究をまとめた大きな解析では、1日7,000歩前後までで、病気や死亡の危険が下がる分の大⁠部⁠分が見られました。その先の上積みは、小さくなります78。

1万歩でなくていい1日2,000歩の人と比べた、死亡の危険の下がり方

1日の歩数死亡の危険
4,000歩36% 低い
7,000歩47% 低い
10,000歩48% 低い
12,000歩55% 低い

7,000歩を超えると、上積みは小さくなります。国の目安は、働く世代で1日約8,000歩です。観察研究のまとめで、歩数だけの効果とは限りません。

出典:Ding D, et al. Lancet Public Health 2025;10:e668-81(57研究のまとめ)/厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」

1万歩でなくても大丈夫。7,000〜8,000歩あたりが目安です。インターバル速歩は、歩数を増やすのとは別の足し方です。いつもの歩数の中の一部を、速く歩きます。

「やせる歩き方」ではない

海外では「やせる」と紹介されることもありました。けれども、もとの日本の研究では、体重の変化は小さく、ふつうに歩いた人と差はありませんでした1。体重が大きく減った海外の試験は、週5時間歩いています9。

また、インターバル速歩が病気や寿命を変えるかどうかは、まだ調べられていません10。

海外の流行と、研究でわかっていること「ジャパニーズ・ウォーキング」の話

流行で言われたこと研究でわかっていること
日本式の歩き方信州大学で考えられた「インターバル速歩」。日本ではこの呼び名は使われていない
やせる日本の研究では体重の変化は小さかった。大きく減った試験は週5時間歩いていた
1万歩より効く比べた相手は「1日8,000歩以上」。比べたのは脚の力・持久力・血圧
大事なのは30分歩くこと効いていたのは、速く歩いた時間(週50〜60分)
長生きできる病気や寿命への効果は、まだ調べられていない
出典:Nemoto K, et al. Mayo Clin Proc 2007/Masuki S, et al. Mayo Clin Proc 2019/Karstoft K, et al. Diabetes Care 2013/Karstoft K, et al. Appl Physiol Nutr Metab 2024

筋トレの代わりではない

太ももの力が伸びたとはいえ、インターバル速歩は筋トレの代わりではありません。国の目安は、歩くことに加えて、筋トレを週2〜3日です4。

インターバル速歩は、「歩く」の中身を濃くするもの。筋トレは別に続けましょう。家でできる筋トレは、50歳からの筋トレ、週2回からにあります。

通勤の行き帰りで

ここからは、整形外科医としての提案です。

  • 駅までの道で、3分速く・3分ゆっくりを2〜3回。帰り道でも同じように。行き帰りを合わせて、1日の速歩を積み上げます。
  • 昼休みの15〜20分を使う。
  • 平日が忙しい週は、週末にまとめて。速く歩く合計が週60分になればかまいません5。
  • 時計は、スマホのタイマーで十分です。
  • 信号や人混みで、3分ぴったりにならなくても気にしなくて大丈夫です。人の多い場所や駅の階段では、無理に速くしません。

朝でも夜でも、続けやすい時間で行いましょう。

座りっぱなしを区切ることとは別のものです。区切り方は、座りっぱなしは、30分ごとに区切るにあります。

歩き方のコツ

  • 背すじを伸ばし、前かがみにならない5。
  • かかとから着地する。すり足は、つまずきのもとです5。
  • 腕は、前に振り出すより、軽く後ろに引く感じで5。
  • かかとにクッションのある靴で。

膝や腰が痛いときは

膝や腰が痛いときも、目安は膝や腰が痛いときの、動き方と同じ、信号の3色です。

  • 青:痛くない、またはほとんど気にならない。そのまま続けます。
  • 黄:少し痛むが、翌朝には、いつもの痛みに戻っている。同じ量で続けるか、速く歩く時間を短くします。
  • 赤:歩いている間に痛みが強くなる。翌日も痛みが増えたまま。膝が腫れる、熱っぽい。速く歩くのはやめて、ふつうの速さに戻します。

赤が数日たっても引かないときは、受診してください。

膝がつらい人は、歩幅を大きくするより、歩くテンポを上げて速くしましょう。上り坂も避けます。

歩くと脚がしびれたり痛んだりして、休むと楽になる方は、脊柱管狭窄症のことがあります。先に脊柱管狭窄症と運動をお読みください。

始める前に、やめるとき

速く歩くのは、「中くらい〜強め」の運動です。慣れない人が急に強い運動をすると、体の不調が起きやすくなります4。

始める前に、主治医に相談してほしい方

  • 心臓の病気や高い血圧で、運動を止められている
  • 胸が痛くなることがある
  • めまいでふらつく。この1年に気を失ったことがある
  • 糖尿病の治療中(特に、インスリンや血糖を下げる薬を使っている)
  • 運動で悪くなりそうな、骨や関節の病気がある

健診で血圧が180/110以上と言われた方は、先に受診して整えてから始めましょう。その日の血圧が160/100以上なら、速く歩くのはやめて、散歩程度にします4。血圧の薬を飲んでいる方は、脈ではなく「きつさ」で強さを判断してください4。

すぐにやめるとき

胸の痛み、動悸、めまいやふらつき、冷や汗、いつもと違う強い疲れ、関節や筋肉の強い痛みが出たら、すぐにやめましょう4。

翌日の仕事に響くほど疲れるなら、やりすぎです4。

暑い日

暑い日は、朝や夕方に回すか、休みます。暑さ指数や熱中症警報を確かめましょう11。研究でも、夏は続けられる日が大きく減りました12。水は、のどが渇く前に少しずつ飲みます5。