このページでは、変形性膝関節症の注射と手術について、何のためのものか、いつ考えるかをお伝えします。

まず、日本の指針が書いていること

日⁠本⁠整⁠形⁠外⁠科⁠学⁠会の診療ガイドラインは、今ある治療はどれも、膝の痛みなどの症状を和らげるためのもので、病気の進み方そのものを遅らせる治療はまだない、と書いています1。

注射も手術も、この「症状を和らげる」の中にあります。そして治療の土台は、知ることと、動くことです。動き方は膝・腰が痛いときの動き方に、病気のしくみは変形性膝関節症とはにまとめています。

注射は、運動を続けるための手助け

膝の注射は、症状を和らげるものヒアルロン酸とステロイド

ヒアルロン酸ステロイド
何のため痛みを和らげる炎症と痛みを
短い期間おさえる
効く期間効果は小さい数週間。
半年後には差がない
日本の指針弱く勧める弱く勧める。
頻回・長期は避ける
注意海外には
勧めない指針もある
続けて打つと
軟骨が減った試験がある

どちらも運動の代わりではありません。間隔と回数は主治医と相談を。

出典:日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」CQ13・14/Kolasinski SL, et al. Arthritis Care Res 2020;72:149-62/Pereira TV, et al. BMJ 2022;378:e069722/Jüni P, et al. Cochrane 2015;CD005328/McAlindon TE, et al. JAMA 2017;317:1967-75

ヒアルロン酸の注射

ヒアルロン酸の注射は、膝の痛みを和らげる目的で使われます。軟骨を補う注射ではありません。

評価は、学会によって分かれています。

  • 日本の指針は「行うことを弱く勧める」としています1。
  • 米国リウマチ学会の指針は、膝では「行わないことを条件付きで勧める」としています2。
  • 多くの試験をまとめた大きな研究では、偽の注射との差は小さく、意味のある差に届きませんでした3。

効果は大きくない、というところは共通しています。注射をするかどうかは、主治医とよく相談してください。注射は、運動の代わりではなく、痛みを抑えて運動を続けるための手助けと考えましょう。

ステロイドの注射

ステロイドの注射は、膝の炎症と痛みを短い期間おさえます。効くのは数週間で、半年後には偽の注射と差がなくなっていました4。

日本の指針は「有用だが短期的な効果のみ。頻回の投与や長期間の使用は避けるべき」としています1。3か月ごとに2年間打ち続けた試験では、痛みは偽の注射と変わらず、軟骨がわずかに多く減っていました5。

効いたからといって、定期的に打つものではありません。間隔と回数は、主治医に確かめましょう。注射のあと、膝が腫れる・熱を持つ・強く痛むときは、早めに受診してください1。

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膝の中を「掃除」する手術は、勧められていない

関節鏡(内視鏡)で膝の中の傷んだ半月板などを取り除く手術は、変形性膝関節症に対しては、日本の指針で行わないことを提案するとされています。運動療法などと比べて、痛みや動きの改善に差がなく、人工関節になる人も減らしませんでした1。

ただし、膝の中で何かが引っかかって、急に伸びない・曲がらない(ロッキング)ときは別です。関節鏡の手術を早めに考えることがあります1。

手術を考えるのは、生活が回らないとき

手術は、いつ考える?上から順に

段階すること
土台知る・動く。
太り気味なら体重も
痛みの手当て薬・注射
急に伸びない・
曲がらない
関節鏡の手術を
考えることがある
運動を続けても
生活が回らない
手術を相談する

手術は3つ。骨切り術=比較的若く活動的な人/単顆置換術=傷みが片側に限られる人/人工関節=進んだ変形の高齢の人。レントゲンの見た目だけで決めません。

出典:日本整形外科学会「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」CQ15・BQ11〜13/Skou ST, et al. N Engl J Med 2015;373:1597-606

手術を考える目安は、次のようなときです。

  • 膝の痛みで、仕事や家事、外出がままならない。
  • 運動などの治療を続けても、良くならない。

レントゲンの見た目だけで決めるものではありません。レントゲンの変化と痛みは、一致しないことが多いからです1。

膝の手術には、主に3つあります1。

  • 骨切り術:すねの骨を切ってO脚を矯正し、膝の内側にかかる負担を減らします。比較的若く、活動的な人に向いています。スポーツに戻る人も多い手術です。
  • 単顆置換術:傷みが膝の内側か外側の片方に限られ、靱帯が保たれている人に、傷んだ側だけを人工の関節に替えます。
  • 人工膝関節全置換術:変形が進み、痛みが強い人に、膝の関節の表面をすべて人工の関節に替えます。主に高齢の人の手術です。

どの手術が向くかは、膝の傷み方、年齢、活動の多さで変わります。整形外科でよく相談してください。

なお、2026年から、軟骨の欠けた範囲が限られた一部の人には、自分の軟骨を育てて移植する手術も保険で受けられるようになりました。詳しくは膝の軟骨は再生する?にまとめています。

人工関節は「最後の手段」でも「早いほど楽」でもない

デンマークで、人工関節の手術を勧められた人を2つに分けた試験があります6。

  • 手術を受けて、さらに運動などの治療を12週続けた人は、痛みと動きが大きく良くなりました。
  • 一方で、重い合併症は、手術を受けた人のほうが多く起きていました。
  • 手術をせずに運動などの治療を12週続けた人も良くなり、多くは1年たっても手術を受けずに過ごしていました。

人工関節は、よく効く手術です。同時に、体への負担もあります。「できるだけ我慢する」のでも、「早く替えれば楽」でもなく、痛みと生活への支障、運動などを続けた結果を見て決める。これが、整形外科医としての考え方です。

まとめ

  • 今の治療は、どれも症状を和らげるためのもの。土台は、知ることと動くこと。
  • ヒアルロン酸の注射は効果が小さく、評価が分かれている。運動を続けるための手助け。
  • ステロイドの注射は数週間。何度も続けて打たない。
  • 膝の中を「掃除」する関節鏡の手術は、勧められていない。
  • 手術は、生活が回らず、運動などを続けても良くならないときに。骨切り術・単顆置換術・人工関節から、膝と生活に合わせて選ぶ。