このページでは、研究で確かめられている対策と、よく聞く思い込みの本当のところ、受診したほうがよいサインをお伝えします。
50代の体の不調、上位5つ人口千人あたり・2025年(複数回答)
| 順位 | 男性 50〜54歳 | 男性 55〜59歳 | 女性 50〜54歳 | 女性 55〜59歳 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 腰痛 80.0 | 腰痛 95.8 | 肩こり 110.6 | 肩こり 108.4 |
| 2 | 肩こり 58.9 | 肩こり 63.0 | 腰痛 93.6 | 腰痛 99.1 |
| 3 | 体がだるい 36.4 | 体がだるい 42.1 | 体がだるい 60.4 | 手足の関節が痛む 75.2 |
| 4 | 物を見づらい 34.3 | 手足の関節が痛む 39.6 | 手足の関節が痛む 58.4 | 頭痛 54.2 |
| 5 | 手足の関節が痛む 33.6 | 目のかすみ 38.9 | 頭痛 57.1 | 体がだるい 50.5 |
肩こりの訴えは2019年から減っていますが、すべての症状の訴えが一緒に減っています。
肩こりは、病名ではありません
肩こりは、首すじから肩、背中にかけての「張る」「こる」「痛い」感じの呼び名です。中心になるのは、首の後ろから肩に広がる僧帽筋(そうぼうきん)という筋肉です2。
多くは、重い病気ではありません。海外の診療の指針も、首や肩の痛みの多くは自然に落ち着いていくもので、動きを保つことが大切だとしています3。
研究の多くは「首や肩の痛み」を調べたものです。このページでは、日本語の「肩こり」に近いものとして紹介します。
いちばん確かめられているのは、首と肩の筋トレ
肩こりの対策で、研究がいちばんそろっているのは、首と肩まわりの筋肉を鍛えることです4。
- パソコン仕事などで首や肩の痛みが多い人の試験では、1日わずか2分のゴムチューブの運動でも、10週で痛みが減りました5。
- 事務職の人の試験では、週1時間の筋トレを、1回にまとめても、3回や9回に分けても、同じように痛みが減りました6。
- 首や肩の筋トレは、自転車こぎのような全身運動や、ストレッチと有酸素運動の組み合わせより、はっきりした効果がありました78。
肩こりは、ほぐすより鍛える首と肩の痛みの試験から
| 研究 | 誰で | 何を・どれだけ | 結果 |
|---|---|---|---|
| デンマーク 2011 | 首肩の痛みが多い働く人 198人 | ゴムチューブの筋トレ 1日2分・週5日・10週 | 2分でも痛みが減った |
| デンマーク 2012 | 事務職 447人 | 週1時間の筋トレを 1回・3回・9回に分けて | どの分け方でも減った |
| デンマーク 2008 | 僧帽筋の痛みがある女性 48人 | 首肩の筋トレ/自転車こぎ 週3回・10週 | 筋トレは大きく減った。自転車こぎは運動直後だけ |
| フィンランド 2003 | 首の痛みがある女性事務職 180人 | 首の筋トレ/ストレッチと有酸素運動 12か月 | 筋トレのほうが効いた |
| コクラン 2015(27試験) | 首の痛みのある大人 | 筋トレ/ストレッチだけ | 筋トレは効く。ストレッチだけでは効きにくい |
| コクラン 2024・日本の鍼の試験 | 首の痛み・肩こり | マッサージ・鍼 | その場〜翌日は楽。形だけの施術と差ははっきりしない |
研究の多くは「首や肩の痛み」を調べたものです。
ストレッチは、職場の体操として国も勧めています9。やめる必要はありません。ただ、ストレッチだけでは、肩こりを減らす効果は期待しにくいことが分かっています4。ストレッチに、筋トレを足しましょう。
運動には、肩こりを予防する効果も報告されています10。
家でできる3つの動き
試験で使われた動きから、家でできるものを3つ選びました。軽いダンベル、水を入れたペットボトル、ゴムチューブのどれかを使います。
- 肩をすくめる:両手に重りを持って立ち、両肩を耳に近づけるように、まっすぐ上へすくめます。ゆっくり戻します。
- 腕を横に上げる:両手に重りを持ち、ひじを軽く曲げたまま、腕を横から肩の高さまで上げます。ゆっくり下ろします。
- ゴムチューブを後ろへ引く:胸の前でゴムチューブを両手で持ち、左右に開くように、肩甲骨を寄せながら引きます。ゆっくり戻します。
どれも、ゆっくり上げて、ゆっくり戻す。10回ほどで「少しきつい」と感じるくらいの重さが目安です。
量は、1日2分から。慣れてきたら、少しずつ増やし、週に合計1時間くらいまでで十分です56。毎日でも、週に何回かにまとめても構いません。
ほかの筋トレは、50歳からの筋トレ、週2回からと鍛えるのページにあります。
運動を休む目安
- 運動中に、腕や手にしびれが走る、痛みが腕のほうへ広がるときは、すぐにやめて整形外科を受診してください。首の神経から来ていることがあります11。
- 首を強く後ろにそらす運動は避けましょう。 首の神経の症状は、首をそらすと強くなることがあります11。
- 運動のあと少し痛んでも、翌朝にいつもの状態に戻っていれば、続けて大丈夫です。考え方は膝・腰が痛いときの動き方と同じです。
もみほぐしは、その場は楽になる
マッサージや鍼(はり)に行くと、その日は楽になります。その気持ちよさは本物です。
ただ、マッサージを「形だけの施術」と比べた試験では、はっきりした差は見られませんでした12。肩こりの鍼の試験でも、実際には刺さない「形だけの鍼」で、翌日まで楽になっていました13。
効果は、その場から数日のことが多いようです14。続く改善は、自分で動かすことから。 通うのなら、それに加えて、自分で鍛える時間を持ちましょう。
「ストレートネック」と言われたら
整骨院や病院で「首がまっすぐ(ストレートネック)ですね」と言われた人もいると思います。けれど、レントゲンの首のカーブだけで、肩こりの原因とは言えません。
- 首の痛みがある人とない人で、レントゲンの首のカーブに違いは見られませんでした15。
- 症状のない日本人を調べた研究では、首のカーブは若い人でも小さく、年齢とともにむしろ大きくなっていました16。
- 学会も、首の病気は「検査所見だけで診断することはできません」と書いています17。
「スマホ首」も同じです。スマホを見るときの首の角度と、大人の首の痛みには、関連が見られませんでした18。
一方で、首の痛みがある大人は、頭がわずかに前に出ている傾向がある、という研究もあります19。どちらが先かは、分かっていません。
姿勢と首の痛み、研究で分かっていることストレートネックや「スマホ首」だけでは説明できない
| 調べたこと | 誰で | 結果 |
|---|---|---|
| レントゲンの首のカーブ(まっすぐ・逆カーブ) | 45歳以上 107人 | 痛みがある人とない人で差なし |
| 症状のない人の首のカーブ | 日本の 1,230人 | 20代でも小さく、年齢とともに大きくなる |
| スマホを打つときの首の角度 | 18〜65歳 582人 | 首の痛みと関連なし |
| 頭が前に出る姿勢 | 研究のまとめ | 痛みのある大人でわずかに大きい。どちらが先かは不明 |
| 17歳の座り方と、22歳の首の痛み | 686人 | 背筋を伸ばした女性のほうが、痛みが続いた |
決まった「正しい姿勢」を保つより、こまめに姿勢を変える。
ですから、「姿勢は関係ない」とも「姿勢が原因」とも言えません。背筋をピンと伸ばした座り方の若い女性のほうが、何年か後に首の痛みが続いていた、という研究もあります20。
大切なのは、決まった「正しい姿勢」を保つことより、同じ姿勢を続けず、こまめに姿勢を変えることです。
仕事の合間に
国の作業のガイドラインは、パソコン仕事について、1時間を超えて続けないこと、その間にも1〜2分の小休止をはさむことを勧めています9。できれば、30分ごとに立ち上がるとさらによいでしょう。
- 画面の上の端は、目の高さか、やや下に9。
- 遠近両用の眼鏡で、画面をあごを上げて見上げていませんか。首をそらす姿勢は、首の神経の負担になることがあると、学会が書いています11。画面を少し下げる、パソコン用の眼鏡を眼科で相談する、という手があります。
- 小休止のときに、肩をすくめて戻す動きを数回。筋トレの2分は、仕事の合間でも取れます。
眠りと、仕事の負担
寝不足が続いていたり、仕事の負担が大きかったりする人は、首や肩の痛みが新しく出やすいことが報告されています2122。原因と言い切れるわけではありませんが、眠りを整えることも肩こりの対策の一つです。眠りについては50歳からの睡眠にまとめています。
枕を替えて肩こりが治る、という確かな研究はありません。どの種類の枕が優れているとも言えません23。自分が楽に眠れるもので十分です。
お風呂で温めて楽になるなら、続けて構いません。
肩こりに見えて、別の病気のことがあります
脊椎外科医として、いちばんお伝えしたいのはここです。肩こりだと思っていたら、首の神経や脊髄、心臓の病気だった、ということがあります。
肩こりに見えて、別の病気のことがあるこんなときは受診を
| こんなとき | 考えられること | どうする |
|---|---|---|
| 腕や手のしびれ・痛み、首をそらすと腕に響く、腕の力が落ちた | 首の神経 | 整形外科へ |
| 箸・ボタン・字が不器用に、足がもつれる、手すりが要る | 首の脊髄 | 早めに整形外科へ |
| 肩・腕・首・あごの痛みに、胸の圧迫感・息苦しさ・冷や汗 | 心臓 | すぐに受診 |
| 熱、原因のわからない体重の減少、じっとしていても痛い | ほかの病気 | 早めに受診 |
| 転んだ・ぶつけたあとの首の痛み、手足のしびれ | 首のけが | 受診 |
| 肩を動かすと痛い、腕が上がらない | 肩の関節(五十肩など) | 整形外科へ |
1つ当てはまれば病気、というわけではありません。迷ったら相談してください。
- 腕や手のしびれ・痛み、首をそらすと腕に響く、腕の力が落ちた:首の神経が圧迫されていることがあります。整形外科へ11。
- 箸・ボタン・字を書くのが不器用になった、歩くと足がもつれる、階段で手すりが要る:首の脊髄が圧迫されていることがあります。早めに整形外科へ17。50代で見つかることが多く、「年のせい」と思われやすい病気です24。
- 転んだり、ぶつけたりしたあとからの首の痛みや手足のしびれ:受診してください17。
- 熱がある、原因のわからない体重の減少、じっとしていても痛みが強くなる:早めに受診してください。
- いつもと違う強い頭痛、急に始まった頭痛:肩こりに頭痛がともなうことはありますが、いつもと違うときは受診を2。
- 肩を動かすと痛い、腕が上がらない、夜に肩が痛む:肩の関節の病気のことがあります。五十肩(凍結肩)のページへ。
まとめ
- 肩こりは、ほぐすより鍛える。1日2分の首と肩の筋トレから。
- マッサージは、その場は楽になる。続く改善は、自分で動かすことから。
- ストレートネックだけで、肩こりは説明できない。同じ姿勢を続けない。
- 手のしびれ、不器用さ、足のもつれ、胸の症状は、肩こりと思わずに受診を。