運動は、膝にも腰にも勧められている治療です

日本の診療ガイドラインは、膝の痛み(変形性膝関節症)にも、長く続く腰痛にも、運動を「行うことを強く推奨」しています123。

効果は、劇的なものではありません45。それでも、続けるほど、日々の動作が楽になりやすい治療です。害が少ないことも、運動の良いところです。

「動かすと膝がすり減る」という心配

「使いすぎて、すり減った。動かすと、もっと減る」。外来で、よく聞く心配です。

運動が膝の軟骨を傷めたという結果は、研究ではほとんど出ていません6。ただし、調べた研究の数は、まだ多くありません。

太もも前の筋力が弱いほど、膝が痛む傾向があることも、日本の研究で示されています1。運動として歩いている人は、膝がよく痛むようになることが少なかった、という観察の研究もあります7。

痛みの目安は、信号の3色

運動中に少し痛むのは、多くの場合かまいません。目安は、「翌朝には、いつもの痛みに戻っているか」です8。

  • 青:痛くない、またはほとんど気にならない。そのまま続けましょう。
  • 黄:少し痛むが、翌朝には、いつもの痛みに戻っている。同じ量で続けるか、少し減らします。
  • 赤:運動中に痛みが強くなる。翌日になっても、痛みが増えたまま。膝が腫れる、熱っぽい。その運動は休み、次は軽くします。

赤が数日たっても引かないときは、受診してください。

始めたばかりのころは、痛みが一時的に増えることがあります9。回を重ねるうちに、小さくなっていきます10。

膝がつらい日は「浅く・高く・少なく」

ここからは、整形外科医としての提案です。痛い日も、種目を丸ごとやめるより、形を変えて続けます。

  • 椅子スクワット:高い椅子にする。座面にクッションを置く。立⁠ち⁠上⁠がりきる前に座る。机や肘掛けに手をつく。回数を減らす。
  • 壁腕立て伏せ:壁との距離を縮める。腰が反って痛むときも、壁に近づきます。
  • かかと上げ:椅子の背に両手でつかまる。上げる高さを低くする。
  • 片脚立ち:痛い脚で立つと痛むときは、両手でつかまる。時間を短くする。
  • 継ぎ足立ち:膝の曲げ伸ばしがないので、続けやすい運動です。すぐつかまれる所で行います。

膝が痛いうちは、深くしゃがむ運動や、正座の練習は控えましょう。それぞれの手順は、鍛えるのページにあります。

ぎっくり腰は、寝ているより、ふだんの生活を

急に腰が痛くなったときも、できる範囲でふだんの生活を続けたほうが、寝ているより回復に良いとされています211。急な痛みの時期に、特別な体操をする必要はありません2。

太り気味の方は、食事の見直しも

太り気味の方は、運動に食事の見直しを組み合わせると、膝が楽になりやすくなります。体重を減らすだけより、運動と組み合わせたほうが、良い結果が出ています112。

体重が少し減るだけでも、歩くたびに膝にかかる負担は、その何倍も減ります13。

ただし、急に体重を落とすと、骨が弱くなることがあります1。主治医と相談しながら進めましょう。

運動を始める前に

  • 心臓の病気、高い血圧、糖尿病の目の病気がある方は、主治医に相談してから始めましょう。
  • 限界まで追い込まない回数と強さで行います。息をこらえないようにします。
  • 痛み止めは、自分で量や飲む時間を変えず、主治医や薬剤師に相談してください。

すぐに受診してほしいとき

膝

  • 急に腫れた。熱をもって赤い。熱がなくても、腫れて熱いときは受診してください14。
  • 引っかかって、急に伸びない、曲がらない1。
  • 転んだり、ひねったりした後から、体重をかけられない。

腰

  • 足の力が入りにくい、しびれが広がる
  • 尿や便が出にくい、もれる
  • 熱がある、食べているのに体重が減る
  • 姿勢を変えても、じっとしていても、痛みが変わらない

夜も、じっとしていても強く痛み続けるときや、がんの治療を受けたことがある方、ステロイドを長く使っている方は、主治医に相談してください。