ただし、伸びるのは主に「練習した動き」です。片脚立ちを練習すれば片脚立ちは上手になります。それだけで、つまずいたときに踏みとどまる力までつくとは限りません3。だから、ときどき練習の中身を変えます。

研究の多くは65歳以上の人が対象で、50代だけを調べた試験は見つかりませんでした。それでも、早く始めて困ることはありません。自分のいまのバランスは、片脚で、何秒立てますかで確かめられます。

筋トレと、並べて

「まず筋力をつけてから、バランスの練習を」と言われることがあります。けれども、その順番を守らなければいけないと示した研究は見当たりません。

脚の筋力とバランスの成績の結びつきは、どの年代でも弱いことがわかっています。2つは別々の力なので、両方を鍛えるのがよいとされています4。筋トレだけでもバランスは少しよくなりますが、その幅は小さめです1。

筋トレの始め方は50歳からの筋トレ、週2回からにあります。筋トレの日に、続けてバランスの練習をすれば、手間は増えません。

少しずつ難しく、ときどき変える

最初は、鍛えるのページの片脚立ちと継ぎ足立ちから始めます。ぐらつかずにできるようになったら、1段ずつ難しくしていきます。

少しずつ、難しくできるようになったら、次の段へ

段やり方
1つかまって片脚立ち
椅子の背や流し台に両手をのせて、片足を少⁠し⁠浮⁠か⁠せる
2支えを減らす
片手、指先だけ、と支えを減らしていく
3継ぎ足で立つ・歩く
前の足のかかとを、後ろの足のつま先につける。床に貼ったテープの上を歩く
4動きながら
前、後ろ、横に歩く。速さを変える。向きを変える
5感覚を変える
目を閉じる。座布団の上に立つ(流し台の前で、両手をすぐ置ける位置で)
62つのことを同時に
歩きながら、100から3ずつ引く。しりとりをする

5の段は、目を開けた片脚立ちがぐらつかずにできるようになってから。

出典:Lesinski M, et al. Sports Med 2015;45:1721-38/Wang J, et al. Ageing Res Rev 2026;121:103303/Khan MJ, et al. Eur Geriatr Med 2025;16:2047-83/日本整形外科学会 ロコモONLINE「ロコトレ」
台所の流し台に両手を添えて、片足を浮かせて立つ女性
台所の流し台に両手を添えて、片足を浮かせて立つ女性

床に貼った養生テープ1本は、いちばん安上がりな平均台になります。アメリカで、細いベルトの上を歩く「スラックライン」という競技を始めた一人は、67歳のいまも川の上でベルトを渡っています。そのベルトを、地面のテープや板に置き換えても練習になると話しています5。ベルトの上でジャグリングやナイフ投げまでしているそうですが、そこまで真似る必要はありません。

床に貼った青いテープの上を、両腕を横に広げて一直線に歩く男性
床に貼った青いテープの上を、両腕を横に広げて一直線に歩く男性

目を閉じる、やわらかい足場に立つといった「感覚を変える練習」は、家でできる方⁠法の中でも効果が期待できるとされています6。歩きながら計算するような「2つのことを同時にする練習」も、動きながらのバランスをよくし、転ぶ回数を減らしていました。ただし、こちらは根拠の確かさがまだ低めです7。

同じ練習ばかり続けていると、伸びるのはその練習だけです。練習した動きは大きく伸びても、練習していない動きにはほとんど広がらなかった、という研究があります3。

伸びるのは、練習した動き効果の大きさ(0.8で「大きい」の目安)

練習した動き
0.79
練習していない動き
ほぼ0

困っている動きそのものを、練習に入れましょう。

出典:Kümmel J, et al. Sports Med 2016;46:1261-71(6試験・102人。練習していない課題では −0.07〜0.18)

ですから、ふだん困っている動きそのものを練習に入れます。階段を上り下りする、くるりと向きを変える、荷物を持って歩く。慣れてきたら、組み合わせを入れ替えます。

楽しく続ける運動

体を動かしながら頭も使う運動は、日常で歩くときに近い練習になります。歩くときは、周りを見て、判断して、速さや向きを変えているからです5。

楽しく続ける運動、根拠はどれくらい?バランスと転倒について

運動わかっていること
太極拳転ぶ回数が減ることが、いくつもの試験で確かめられている
ダンスバランスはよくなる。転ぶのが減るかは、研究で結論が分かれる
ラジオ体操虚弱な高齢者の試験で、立って歩く動きなどが少しよくなった
テニス・卓球などのラケット競技長⁠生⁠きとの関係を見た研究はあるが、バランスは調べられていない
平均台・綱渡り(スラックライン)研究は見つからなかった
出典:Huang ZG, et al. BMJ Open 2017;7:e013661/Lomas-Vega R, et al. J Am Geriatr Soc 2017;65:2037-43/Li F, et al. JAMA Intern Med 2018;178:1301-10/Mattle M, et al. JAMA Netw Open 2020;3:e2017688/Lazo Green K, et al. Age Ageing 2024;53:afae104/Osuka Y, et al. J Epidemiol 2024;34:467-76/Oja P, et al. Br J Sports Med 2017;51:812-7
朝の公園で、4人の年配の男女がそろって太極拳をしている
朝の公園で、4人の年配の男女がそろって太極拳をしている

太極拳は、転ぶ回数が減ることが、いくつもの試験で確かめられています89。転びやすい70歳以上の人を対象にした試験では、転倒予防のために組み立て直した太極拳が、ふつうの体操よりも転ぶ回数を減らしていました10。

ダンスは、バランスがよくなるという研究がそろっています11。転ぶのが減るかについては、減ったとまとめた研究と、根拠が足りないとした研究に分かれています1112。筋トレやバランスの練習の代わりにするのではなく、足す形で取り入れるのが無難です。

ラジオ体操は、虚弱な高齢者の試験で、立⁠ち⁠上⁠がって歩く動きなどが少しよくなりました13。テニスや卓球のようなラケット競技は、続けている人が長⁠生⁠きという研究はありますが、バランスへの効果は調べられていません14。

近くで始めるなら、地域の太極拳サークル、自治体の介護予防教室、公園のラジオ体操があります。

週3回、3か月

健康な高齢者の試験をまとめた研究では、週3回、1回30〜45分ほど、11〜12週続けた計画で、効果が大きく出ていました2。転倒予防の研究でも、バランスに挑む運動を長く行うほど、効果が大きくなっていました15。

1⁠週⁠間の目安(例)週3回、3か月ほど続ける

例バランス+筋トレ 週3日・1回30〜45分

  1. 月バランス
  2. 火
  3. 水バランス
  4. 木
  5. 金バランス
  6. 土
  7. 日

毎日 片脚立ち(左右1分ずつ、1日3回)

筋トレの日に、続けてバランスの練習をすれば、手間は増えません。

出典:Lesinski M, et al. Sports Med 2015;45:1721-38/Howe TE, et al. Cochrane 2011;CD004963/Montero-Odasso M, et al. Age Ageing 2022;51:afac205/日本整形外科学会 ロコモONLINE「ロコトレ」

世界の転倒予防ガイドラインも、週3回以上、12週以上を勧めています。やめると効果は薄れていきます16。毎日の片脚立ちに加えて、週3回、少し難しい練習を足す。これを3か月続けることを、まずの目標にしてください。

転びやすさが気⁠に⁠な⁠る方は、転ばない体は、脚とお尻からもあわせてご覧ください。