片脚で立てる時間は、年齢とともに短くなります。目を開けて15秒立てない人は、50代でも10人に1人ほどいます1。

片脚で立つのが苦手な人は、その後に介護が必要になったり、亡くなったりすることが多い。そういう研究が、ブラジルにも日本にもあります23。ただ、これは「先を言い当てる目安になる」という結果です。片脚立ちを練習すれば長⁠生⁠きできる、と確かめられたわけではありません。

それでも、いまの自分の位置を知っておく意味はあります。バランスは、練習すれば伸びるからです。鍛え方はバランスは鍛えられるにまとめました。

バランスを支える3つの情報

体がどちらに傾いているかを、私たちは3つの入り口で感じています。目、耳の奥(前庭)、足の裏や関節の感覚です。脳がこの3つをまとめて、筋肉に「こちらに踏ん張れ」と返しています。

目を閉じると片脚立ちが急に難しくなるのは、入り口を1つ外したからです。アメリカの40歳以上を調べた全⁠国⁠調⁠査では、やわらかい台の上で目を閉じて立つ検査に、3人に1人あまりが通りませんでした。年齢が上がるほど多く、糖尿病のある人でも多くなっていました4。

バランスは、3つの情報の合わせ技脳が3つをまとめて、筋肉に返す

情報の入り口年齢とともに起きやすいこと
目遠近両用の眼鏡では、足もとを手元用の部分で見ることになる
耳の奥(前庭)頭を動かしたときに目を逆に動かす反射は、80代まで保たれやすい
足の裏・関節の感覚感覚が鈍くなる人が増える。糖尿病があると多い
脳2つのことを同時にすると、歩き方が乱れやすくなる

どれか1つが弱っても、ほかの入り口で補っています。

出典:Agrawal Y, et al. Arch Intern Med 2009;169:938-44/McGarvie LA, et al. Front Neurol 2015;6:154/Gregg EW, et al. Diabetes Care 2004;27:1591-7/Lord SR, et al. J Am Geriatr Soc 2002;50:1760-6/Al-Yahya E, et al. Neurosci Biobehav Rev 2011;35:715-28

足の裏の感覚が鈍くなる人は、年齢とともに増えます。糖尿病があると、さらに多くなります5。

目については、遠近両用の眼鏡にも気をつけたいところです。足もとを、レンズの下の手元用の部分で見ることになるからです。遠近両用などの眼鏡をふだん使う人は転ぶことが多く、とくに外出先と階段で多かったと報告されています6。眼鏡の選び方は老眼は「回復」しないに書きました。

年代ごとの平均

国の体力テストでは、65〜79歳の人が目を開けて片脚で立てる時間を、毎年測っています。2025年度の平均は、65〜69歳で80秒あまり、75〜79歳で60秒足らずでした。5歳ごとに10秒あまり短くなり、男女の差はほとんどありません7。

片脚で立てる時間、年代ごとの平均目を開けて片脚立ち(65〜79歳、2025年度)

男性女性

65〜69歳
83.3秒
82.8秒
70〜74歳
70.3秒
69.1秒
75〜79歳
58.3秒
56.7秒

同じ年代でも、人による差がとても大きい数字です。表と比べるより、自分の前回と比べましょう。

出典:スポーツ庁「令和7年度 体力・運動能力調査報告書」(2026年10月9日公表)表-1-4 開眼片足立ち(65〜79歳、最長120秒)。測定は最長120秒で打ち切り。標準偏差は約42秒

この平均を見て、安心したりがっかりしたりする必要はありません。同じ年代でも人による差がとても大きく、平均から40秒くらい離れている人も珍しくないからです7。

測り方でも数字は変わります。国の体力テストは足を前に挙げ、最長120秒まで測ります。日⁠本⁠整⁠形⁠外⁠科⁠学⁠会のやり方は、足を床から5cmほど上げて、60秒まで測ります8。表の数字と比べるより、同じやり方で測った自分の前回と比べるほうが役に立ちます。

明るい話もあります。1998年度と比べると、どの年代も平均で十数秒から20秒ほど長く立てるようになりました7。片脚立ちで見るかぎり、日本人はこの四半世紀で5歳ほど若返ったことになります。

いまの75〜79歳は、1998年の70〜74歳と同じくらい立てる目を開けて片脚立ちの平均

男性女性

1998年度 70〜74歳
57.3秒
51.5秒
2025年度 75〜79歳
58.3秒
56.7秒
出典:スポーツ庁「令和7年度 体力・運動能力調査報告書」参考資料 表3(年次推移、平成10年度〜令和7年度)

日⁠本⁠整⁠形⁠外⁠科⁠学⁠会は、目を開けた片脚立ちが15秒未満であることを、転びやすさを見る目安の1つにしています8。15秒立てない人は、60代から増えていきます1。

片脚で15秒立てない人は、60代から増える目を開けて片脚立ちが15秒未満の人の割合

50代
9.9%
60代
12.8%
70代
26.8%
80代
55%

健康ウォーキングの参加者の数字です。ふだん歩いている人でも、年代とともに増えます。

出典:日本整形外科学会「運動器不安定症」ページに掲載のデータ(コツコツウォーク2006、健康ウォーキング参加者671人)

家で測るとき

測り方の手順は測るのページにあります。両手を腰に当て、目を開けたまま、片脚を床から5cmほど上げて、秒数を測ります8。

  • 滑らない床で、周りに物を置かずに測ります7。
  • 台所の流し台や机など、すぐつかまれる物のそばで測ります8。
  • 左右とも測り、左右の差もメモしておきます。日本の研究では、短いほうの脚で10秒立てない人に、介護が必要になる人が多くなっていました3。
  • 数か月に一度、同じやり方で測り直すと、自分の変化がわかります。

このふらつきは、運動の前に受診を

ふらつきが、運動不足ではなく病気のサインのこともあります。次のようなときは、運動で何とかしようとする前に受診してください。

このふらつきは、運動の前に受診をふらつきが、病気のサインのことがあります

こんなふらつき考えられること・受診先
急にふらつく。片側の手足に力が入らない、見え方がおかしい、ろれつが回らない脳卒中のことがあります。すぐに119番
ボタンが掛けにくい、箸が使いにくい、字が書きにくい。そのうえ歩くとふらつく首の脊髄の病気(頚髄症)のことがあります。整形外科(脊椎)か脳神経内科を早めに
寝返り、起き上がり、見上げたときに、ぐるぐる回るめまい。1分ほどでおさまる耳の奥の石がずれる病気(良性発作性頭位めまい症)のことがあります。耳鼻咽喉科へ
めまいのあと、ふらつきが何日も続く。頭を動かすと強くなる耳の奥の片側の障害のことがあります。耳鼻咽喉科へ
足の裏の感覚が鈍い、しびれる末梢神経の障害のことがあります。とくに糖尿病のある方は、内科か脳神経内科へ
手がふるえる、歩幅が小さくなった、動きがゆっくりになったパーキンソン病などのことがあります。脳神経内科へ
薬を始めた、増やしたあとからふらつく処方した医師か薬剤師に相談を。自分の判断でやめない
出典:Aroor S, et al. Stroke 2017;48:479-81/Inose H, et al. Spine 2021;46:1007-13/Kimura A, et al. Spine 2020;45:E631-8/von Brevern M, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2007;78:710-5/McDonnell MN, et al. Cochrane 2015;CD005397/Gregg EW, et al. Diabetes Care 2004;27:1591-7/Woolcott JC, et al. Arch Intern Med 2009;169:1952-60

寝返りや見上げたときのめまいは、耳の奥の小さな石がずれて起きることがあります。珍しい病気ではありませんが、ドイツの調査では、効く治療を受けていた人はごく一部でした9。頭の向きを順に変えて石を元に戻す方⁠法で、めまいが消える人がはっきり増えます10。

シャツの小さなボタンを留めにくそうに、手元を見つめる男性
シャツの小さなボタンを留めにくそうに、手元を見つめる男性

脊椎外科医として、いちばん伝えたいのは首の病気です。首の骨の中を通る脊髄が圧迫される「頚髄症」では、手先の細かい動きがしにくくなり、歩くとふらつきます。手術を予定していた日本の頚髄症の患者さんでは、およそ半数が1年のうちに転んでいました1112。転んだことで、手足のまひが悪くなる人もいます12。

大⁠腿⁠骨の付け根を骨折した65歳以上の人を診察すると、10人に1人ほどに、それまで気づかれていなかった頚髄症が見つかった、という報告があります13。症状が出てから診断がつくまで、平均で2年あまりかかっていたという報告もあります14。

私は外来で、歩き方を見ています。バランスを測っているというより、脚のつっぱり(痙性)がないかを見ています。

頚髄症は、整形外科(脊椎)でも脳神経内科でも診ています。手の使いにくさとふらつきが重なっているときは、早めに受診してください。ふらつくからといって、すぐ手術になるわけではありません。軽い場合は、リハビリをしながら様子を見ることもあります15。

急なふらつきは、脳卒中のこともあります。顔や腕、言葉の症状がなく、ふらつきや脚の力が入らないことだけで始まる脳梗塞もあります16。急に起きたときは、迷わず119番に電話してください。

眠る薬や気持ちを落ち着かせる薬は、転びやすさと関係しています17。気⁠に⁠な⁠るときも、自分でやめずに主治医に相談してください。くわしくは睡眠薬と、夜の転倒・骨折に書きました。

転ばないための運動と家の工夫は、転ばない体は、脚とお尻からにまとめています。