眠りの目安や生活の整え方の全体は、50歳からの睡眠にまとめています。
動く習慣は、眠りを良くする。効果は「中くらい」
国の指針は「適度な運動習慣を身につけることは、良質な睡眠の確保に役立つ」としています1。40歳を過ぎて眠りに悩む人の試験をまとめると、運動を続けた人は眠りの質が中くらい良くなり、寝つきが早くなり、睡眠薬を使う人も減りました2。ただ、睡眠時間そのものは、はっきりとは延びていません23。
良くなるのは主に「よく眠れた」という実感で、機械で測った眠りの変化は小さめです4。試験の多くは10〜16週続けたもので、1回だけの運動の効果は小さいことがわかっています23。数か月続けて、少しずつ表れると考えてください。
歩くだけより、筋トレを組み合わせる
運動の種類による違いは、次のとおりです。
運動の種類と、眠りランダム化試験のまとめから
| 運動 | 眠りへの効果 | 確かさ |
|---|---|---|
| 歩く+筋肉の運動 | 睡眠の質がよくなる。高齢者のまとめで最上位 | 試験のまとめ(35試験) |
| 筋トレ | 睡眠の質がよくなる | 試験のまとめ(13研究) |
| 速歩き・ジョギング(息が弾む強さ) | 寝つき・睡眠の質がよくなる | 試験のまとめ |
| ふつうに歩くだけ(高齢者) | はっきりしない | 試験のまとめ |
| 太極拳・ヨガ | 太極拳はよくなる。ヨガは結果が分かれる | 試験のまとめ |
高齢者の試験を比べたまとめ5と、筋トレの試験のまとめ6からわかったことです。国の指針にも「ダンベルを用いるような筋力トレーニングも睡眠改善に効果がある」とあります1。
歩くことが悪いのではありません。歩く習慣に週2回の筋トレを足すと、眠りへの効果がより確かになる、ということです。やり方は50歳からの筋トレ、週2回からにあります。
強さの目安は「息が弾み、汗をかく程度」です1。週末にまとめて長く走るより、平日に少しずつ分けるほうが、眠りにも体にも無理がありません。
12週間の「速歩き+筋トレ」で、何が変わったか
長く不眠に悩む人を、運動する人と何もしない人に分けた試験があります7。
12週の「速歩き+筋トレ」で、何が変わったか60歳以上の慢性不眠 320人の試験(香港)
| 運動した人 | 何もしなかった人 | |
|---|---|---|
| やったこと | 速歩きと筋力運動を、週3回・1時間、12週 | ふだんどおり |
| 夜中に目が覚めている時間 | 約17分短くなった | — |
| 不眠が治まった人(12週) | 19.4%(約5人に1人) | 2.1%(約50人に1人) |
| 不眠が治まった人(2年後) | 42.5%(約5人に2人) | 15.6%(約6人に1人) |
著者は「改善の大きさは控えめ」と書いています。効果は2年後も保たれていました。
近所でもできる、特別ではない運動です。
長く続く不眠には、まず認知行動療法
不眠の治療で最初に勧められているのは、薬を使わない「不眠の認知行動療法(CBT-I)」です。運動と比べた試験もあります8。
運動と、不眠の認知行動療法(CBT-I)50歳以上の慢性不眠 200人で、太極拳とCBT-Iを比べた試験
| 時点 | 太極拳 | CBT-I |
|---|---|---|
| 3か月後(不眠の重さの点数の改善) | 6.7点 | 11.2点(はっきり上) |
| 15か月後 | 9.5点 | 10.2点(ほぼ同じ) |
不眠には、CBT-Iのほうが早く効きます。運動は時間をかけて追いつきますが、代わりではありません。
速歩きと筋トレをCBT-Iと直接比べた試験は、見つかりませんでした。高齢者の別の試験でも、不眠が治まった人はCBT-Iのほうが多くなっていました9。CBT-Iについては、不眠は、薬の前に「眠りの練習」にまとめています。
夜の運動は、寝る2〜4時間前までなら大丈夫
「夜に運動すると眠れない」は、研究で確かめると、ほとんど当てはまりません。
運動する時間帯と、眠り夕方の運動の研究のまとめと、国の指針から
| 運動を終える時刻 | きつい運動 | 軽い運動 |
|---|---|---|
| 朝〜夕方 | よい | よい |
| 寝る4時間以上前 | 眠りとの関係は見られない | よい |
| 寝る2〜4時間前 | おおむね大丈夫 | よい |
| 寝る1時間以内 | 寝つきが悪くなることがある | ストレッチ程度なら |
国の指針の目安は「就寝の約2〜4時間前まで」です。
夕方の運動を調べた研究をまとめると、全体としては眠りは悪くならず、深い眠りがわずかに増えていました10。表の「寝る2〜4時間前」は夜のきつい運動の研究のまとめ11と国の指針1から、「寝る4時間以上前」はふだん運動している人の1年分の記録12からです。
夜しかジムに行けない日は、終える時刻を先に決めておくと、続けやすくなります。
昼の光と、日中に動くことは、セットで
日中に明るい光(1,000ルクス以上)を浴びると、夜に眠りを促すホルモンが増え、寝つきやすくなります1。国は、高齢の世代ほど「日中にできるだけ長く太陽の光を浴びること」と「習慣的に運動を行うこと」を勧めています1。外を歩けば、両方が一度に満たせます。
1日の動き方の例
眠りのための、1日の動き方の例デスクワークの50代の場合
| いつ | やること | ねらい |
|---|---|---|
| 朝 | カーテンを開け、通勤で外を歩く | 朝の光で体内時計を整える |
| 通勤 | 速歩きを3分、ゆっくり3分のくり返し | 息が弾む運動を毎日少しずつ |
| 仕事中 | 30分ごとに立つ | 座りっぱなしを区切る |
| 昼休み | 外に出て歩く | 日中の光を浴びる |
| 週2回 | 筋トレ(椅子スクワット・壁腕立て・かかと上げ) | 筋肉の運動を組み合わせる |
| 夜 | きつい運動は寝る2〜4時間前まで。そのあとは軽く | 寝る前に体を興奮させない |
できるところから1つずつ。続けることが、いちばん効きます。
座りっぱなしの区切り方は座りっぱなしは、30分ごとに区切る、速歩きのやり方は3分速く、3分ゆっくりにあります。
眠りは、筋肉の土台でもある
運動と眠りは、行き来する関係です。眠りが短すぎる高齢者や、長すぎる人には、筋肉が少ない状態(サルコペニア)が多いことが、観察研究で報告されています13。どちらが原因かは、まだわかっていません。寝不足が筋肉づくりに響くことは、休むことも、からだづくりにまとめています。
「運動と眠り」の常識を確かめる
「運動と眠り」の常識を確かめる研究と国の指針で確かめた結果
| よく聞く話 | 研究でわかったこと | 判定 |
|---|---|---|
| 夜に運動すると眠れなくなる | 全体としては悪くならない。寝る直前のきつい運動だけ注意 | × |
| くたくたになるまで運動すれば、ぐっすり眠れる | 強すぎる運動は、かえって眠りを妨げ、けがのもと | × |
| 眠りに効くのは有酸素運動だけ | 筋トレでも睡眠の質がよくなる | × |
| 1日1万歩で熟睡できる | 歩くのはよいが、筋トレと組み合わせたほうが確か | △ |
| ヨガで睡眠が2時間延びる | 眠りの日誌による数字で、確かさは低い | △ |
| 運動すれば、睡眠薬はいらない | 助けにはなるが、不眠の治療の主役は認知行動療法 | △ |
「ヨガで睡眠が2時間延びる」は、不眠症の試験をまとめた研究の数字が広まったものです14。
試験では、運動を続けた人で睡眠薬の使用が減っていました27。睡眠薬との付き合い方は、睡眠薬と転倒にあります。
こんなときは、相談を
こんなときは、相談を運動だけで様子を見ないほうがよいとき
| こんなとき | どうする |
|---|---|
| 運動中に、胸の痛み・強い息切れ・めまい | 運動をやめて受診 |
| 大きないびき、息が止まると言われる、昼に強い眠気 | 睡眠時無呼吸のことがある。受診を |
| 寝つけない・夜中に目が覚める日が、週3日以上・3か月以上続き、昼の調子に響く | 慢性の不眠のことがある。認知行動療法を相談 |
| 痛みで眠れない | 痛みの治療を先に。主治医に相談 |
| 睡眠薬を飲んでいる | 眠れるようになっても、減らす・やめるは主治医と |
まとめ
- 動く習慣は眠りを良くする。効果は中くらいで、数か月続けて表れる。
- 歩くだけより、筋トレを組み合わせる。
- 夜の運動は寝る2〜4時間前まで。直前のきつい運動は避ける。
- 昼は外を歩いて、光と運動を一度に。
- 長く続く不眠には、まず認知行動療法。運動はその土台。