サウナによく入る人は心臓や血管の病気が少ない、という研究はたしかにあります。ただし大半は「よく入る人を追いかけた」研究で、サウナが原因かどうかまでは言えません。時間や回数の作法については、比べた研究そのものがまだありません。お作法の成り立ちはサウナの「お作法」は、どこから来たのかにまとめています。
フィンランドで、20年追いかけた研究
サウナと湯船、研究でわかったことどんな研究か、どこまで確かか
| わかったこと | 調べた人 | 研究の種類 |
|---|---|---|
| 週4〜7回サウナに入る人は、心臓の突然死が少なかった | フィンランドの中年男性2,315人を約20年 | 観察研究 |
| 同じく、認知症が少なかった | 同じ男性たち | 観察研究 |
| 同じく、高血圧になる人が少なかった | 同じ研究の男性1,621人を約25年 | 観察研究 |
| 同じく、脳卒中が少なかった | フィンランドの男女1,628人を約15年 | 観察研究 |
| ほぼ毎日湯船に浸かる人は、心臓・血管の病気が少なかった | 日本の40〜59歳 約3万人を約20年 | 観察研究 |
| 運動に15分のサウナを足すと、運動だけより血圧が下がり持久力が伸びた | フィンランドの平均49歳 47人を8週 | くじで分けた試験(小規模) |
| 体を温める方法を続けても、多くの指標ではっきりした差は出なかった | 試験20本のまとめ | 試験のまとめ |
観察研究は「よく入る人に病気が少ない」ことを示すが、サウナが原因かどうかまでは言えない。
サウナの健康効果としてよく引かれるのは、フィンランド東部の中年男性2,315人を20年ほど追いかけた研究です1。週に4〜7回入る人は週1回の人に比べ、心臓が原因の突然死や心臓・血管の病気による死亡が少なくなっていました1。同じ研究の参加者を調べた解析では、認知症2、高血圧3、脳卒中4も少なかったと報告されています。女性も含めた1,688人の解析でも、よく入る人ほど心臓・血管の病気による死亡が少ないという結果でした5。
数字だけを見ると、いいことずくめです。ただ、読むときに注意が三つあります。
一つ目は、これが観察研究だということです。週に何度もサウナに入れる人は、もともと体が丈夫で、時間やお金にも余裕があるのかもしれません。研究者は収入や体力も考慮して計算していますが、測っていない違いまでは消せません。二つ目は、ほとんどの解析が同じ研究グループによる、同じフィンランドの集団のものだということです。別の国の別の集団で同じ結果が出ているわけではありません6。三つ目は、ほぼ全員がサウナに入る国なので、「入らない人」と比べた結果ではないことです1。
日本には、サウナではなく湯船の研究があります。40〜59歳の約3万人を20年ほど追った研究では、ほぼ毎日湯船に浸かる人は、週に2回以下の人より心臓・血管の病気が少なくなっていました7。高齢の約1万4千人を3年追った研究でも、ほぼ毎日湯船に入る人は介護が必要になる人が少なくなっていました8。これも観察研究で、元気だから毎日お風呂に入れる、という逆の向きの説明が残ります。
試験で確かめられたこと
サウナに入る人と入らない人を、くじで分けて比べた試験は多くありません。その中で、私のやり方に近いものが一つあります。
フィンランドで、運動不足で心臓・血管の病気の危険因子を持つ平均49歳の47人を3つに分けた試験です。週3回の運動のあとに15分のサウナを足した人たちは、運動だけの人たちより、8週間後の血圧が下がり、持久力も伸びていました9。1つの組が15〜16人と小さく、期間も8週間だけです。それでも「運動のあとにサウナ」という順番を試した数少ない試験です。
サウナに入っているあいだ、体の中では血管が広がり、血圧が下がります。30分のサウナで、上の血圧が平均で137から130 mmHgに下がり、30分休んだあとも低いままでした10。心不全の患者さんたちを調べた研究では、サウナで下がった血圧は、開始から6分ほどで最も低くなっていました11。
一方で、湯船やサウナなど体を温める方法を数週間から数か月続けた試験を20本まとめた解析では、血管のしなやかさや血糖、コレステロールなどの多くの指標で、はっきりした差は出ていません12。長い観察研究で見えた大きな差に比べると、試験で確かめられた効果はまだ小さく、不確かです。
医療の場では、日本で生まれた「和温療法」があります。60℃の低い温度のサウナに15分入り、出たら毛布をかけて30分休むもので、重い心不全の患者さんで症状が良くなったと報告されています13。ただし、これは医師の管理のもとで行う治療です。80〜100℃のサウナと水風呂を行き来する入り方とは別物です。
眠りとの関係
寝る1〜2時間前に40〜42.5℃のお湯でシャワーや入浴をすると、寝つきが早くなるという研究のまとめがあります14。10分ほどでも効果が見られました。サウナそのもので眠りが良くなるかを、対照を置いて確かめた試験は見つかりませんでした。眠りのための運動は動くと、眠れるにまとめています。
「8〜12分・3セット」に根拠はあるか
「お作法」に研究の裏づけはあるか日本でよく聞く入り方を一つずつ
| 作法 | 研究でわかっていること |
|---|---|
| サウナ8〜12分 | 時間を変えて比べた試験はない。フィンランドの観察研究では、11分未満と11〜19分で心臓の突然死に差がなかった |
| 3セット | 1セットや2セットと比べた研究はない |
| 水風呂1分 | 比べた研究はない。冷たい水では血圧が上がる |
| 外気浴 | 必要かどうかを調べた研究はない。「ととのう」の脳波の研究では、休憩は室内だった |
| 「ととのう」 | 21〜41歳の20人の小さな研究で、休憩中にリラックスしたときの脳波が増えた |
どれも経験から生まれた目安。短く1回でも、劣るという証拠はない。
サウナの時間や回数を変えて、健康への影響を比べた試験は見つかりませんでした。
「ととのう」を正面から調べた論文は、私が探した範囲では1本です。21〜41歳の20人が「サウナ10分、16℃の水風呂1〜2分、7分の休憩」を3セット行い、休憩中にリラックスしたときに出る脳波が増えていました15。ただ、全員が3セットを行っていて、1セットや2セットと比べてはいません。休憩も屋外ではなく室内でした。参加者に50歳以上の人はいません。
フィンランドの研究では、1回に19分より長く入る人は、11分未満の人より心臓の突然死が少なくなっていました。一方で、11〜19分の人と11分未満の人の間には差がなく、全体の死亡率は時間による差がありませんでした1。これも観察研究なので、長く入るほどよいという根拠にはなりません。
ですから、8〜12分も3セットも、経験から生まれた目安と考えるのが正確です。私の「10分以内に1回」が劣っているという証拠も、優れているという証拠もありません。長く入らないぶん、のぼせや脱水の心配は小さくなります。
サウナと入浴の危なさ
フィンランドでは、サウナの中で亡くなる人は年に10万人あたり2人に届きません。そのうち半数で、お酒が入っていました16。スウェーデンの調査では、亡くなった人のほとんどが1人で見つかっています17。お酒を飲んだあとのサウナでは血圧が下がりやすく、不整脈も起きやすくなります18。
日本で数が多いのは、サウナより湯船の事故です。2023年に家や施設の浴槽で亡くなった65歳以上の人は6,541人で、同じ年代の交通事故の死者2,116人の3倍にのぼりました19。寒い脱衣所で血圧が上がり、熱いお湯で長く浸かるうちに血圧が下がって、立ち上がったときに意識を失う、という流れが考えられています20。消費者庁は、お湯は41℃以下で10分まで、急に立ち上がらない、食後すぐやお酒のあとは入らない、入る前に家族に声をかける、といった点を勧めています21。

運動のあとは、すでに汗で水分を失っています。若い人がサウナに10分を2回入った研究では、それだけで体重が平均400〜500グラム減っていました22。運動のあとにサウナに入るなら、先に水分をとっておきます。

サウナで気をつけたい人入る前に、主治医と相談を
| こんな人は | 理由 |
|---|---|
| 最近、心筋梗塞を起こした人。不安定狭心症、重い大動脈弁狭窄症の人 | サウナを避けるべきとされている |
| 心臓の病気がある人、血圧の薬を飲んでいる人 | サウナで血圧が下がり、冷たい水で上がる |
| お酒を飲んだ人 | 血圧が下がりやすく、不整脈も起きやすい |
| 65歳以上の人、とくに冬 | 浴槽の事故の多くが高齢者。立ち上がるときに意識を失うことがある |
| 運動のすぐあとの人 | すでに汗で水分を失っている。先に水分をとる |
| 1人で入る人 | 具合が悪くなっても気づかれにくい。家族や施設の人に声をかけておく |
サウナで精子が減ることも知られています。週2回、3か月入った男性で精子の数や動きが落ち、やめて6か月後には元に戻っていました23。
よく聞く話を確かめる
サウナの「よく聞く話」を確かめる研究でわかっていること
| よく聞く話 | わかっていること | 判定 |
|---|---|---|
| サウナでやせる | 減るのはほとんど汗の水分。飲めば戻る | × |
| 汗で毒素が出る(デトックス) | 汗にごくわずかな重金属が出るという報告はあるが、体の解毒に役立つと確かめた試験はない | △ |
| 「ととのう」は脳内麻薬が出ている状態 | ホルモンを測った研究は見つからない。測られているのは脳波と気分 | △ |
| サウナに入るとかぜをひかない | 50人の小さな試験で、かぜの回数が少なかったという報告が一つ | △ |
| 長く入るほど体にいい | 我慢を勧める根拠はない。体温が上がりすぎる危険がある | × |
| サウナで二日酔いが治る | 治るという研究はない。お酒の残る体のサウナは不整脈や事故の危険がある | × |
サウナで落ちた体重は、ほとんどが汗の水分です。風呂上がりの麦茶でほぼ戻るので、体重計が喜ぶのはほんの一瞬です。
健康情報の確かめ方は健康情報の読み方にもまとめています。冷たい水については水風呂と交代浴 ― 冷たい水の効き目と危なさで確かめます。
まとめ
- サウナによく入る人は心臓・血管の病気が少ないという研究はあるが、観察研究で、ほとんどが同じフィンランドのグループのもの。
- 運動のあとに15分のサウナを足すと、運動だけより血圧が下がったという小さな試験がある。
- 「8〜12分」「3セット」を、ほかの時間や回数と比べた研究はない。短く1回でも、劣るという証拠はない。
- お酒のあと、1人きり、熱いお湯に長く、急に立ち上がる。入浴の事故は、この四つが重なったときに起きやすい。
- 心臓の病気がある人、血圧の薬を飲んでいる人は、入り方を主治医と相談する。