眠りの時間の目安や、よく眠るための基本は、50歳からの睡眠にまとめています。
年齢とともに、眠りは浅く、途切れやすくなる
眠りを脳波で測った研究をまとめると、大人では年齢とともに、深い眠りが減り、夜中に目が覚めている時間が増えていました。眠りの時間も、少しずつ短くなります。60歳を過ぎても下がり続けたのは、寝床にいる時間のうち実際に眠っている割合(睡眠の効率)でした1。
体内時計も、年齢とともに早まります。夕方に眠くなりやすく、夜中から朝早くに目が覚めやすくなります2。
日本の調査では、大人の5人に1人が眠りの悩みを抱えていました。いちばん多いのが「夜中に目が覚める」で、7人に1人。「朝早く目が覚める」は12人に1人でした。年齢が高いほど、悩みは多くなっていました3。
「不眠症」かどうかは、昼間で決まる
夜中に目が覚めること自体は、年齢とともに誰にでも起こります。不眠症は、眠る時間と環境があるのに眠れず、そのために昼間の生活に支障が出ている状態です。だるさ、集中できない、昼間の眠気、眠ることへの強い不安などです2。
年齢による変化か、不眠症か分かれ目は、昼間の生活に支障があるかどうか
| 年齢による変化のことが多い | 不眠症の可能性がある | |
|---|---|---|
| 夜中に目が覚める | 何度か目が覚めても、また眠れる | 目が覚めると眠れず、つらい |
| 朝 | 早く目が覚めるが、すっきりしている | 早く目が覚め、もう一度眠りたいのに眠れない |
| 昼間 | ふだんどおり過ごせる | だるい・集中できない・昼間に眠い |
| 気持ち | あまり気にならない | 夜が近づくと、眠れるか不安になる |
見当をつけるための目安です。診断は医師が行います。
目が覚めても、また眠れて、昼間は元気に過ごせているなら、年齢による変化のことが多いと考えられます。
長く寝床にいるほど、眠りは薄まる
眠れないと、早めに寝床に入ったり、朝遅くまで横になったりして、眠る時間を取り戻そうとしがちです。ところが、一晩に眠れる時間には限りがあります。長く寝床にいても眠る時間は増えず、寝つきが悪くなり、夜中に目が覚めやすくなります。休まった感じが減ると、さらに長く寝床にいようとする。この悪循環が起こります2。
国の睡眠ガイドが、高齢の方に「寝床にいる時間を8時間以上にしない」としているのは、このためです。米国の中高年5,804人を追った研究では、高齢の人のうち、寝床にいる時間がいちばん長く、しかも「休まった感じがない」人で、死亡の危険が高くなっていました(観察研究)24。寝床にいる時間は、次のように決めます。
寝床にいる時間の決め方国の睡眠ガイド(高齢者版)の目安
| 手順 | すること |
|---|---|
| 1. 記録する | 1週間、寝床に入った時刻・出た時刻と、実際に眠った時間を分けて書く |
| 2. 平均を出す | 実際に眠った時間の1週間の平均を出す(例:6時間) |
| 3. 30分を足す | これが寝床にいる時間の目安(例:6時間半)。起きる時刻を決め、そこから逆算して寝床に入る |
| 4. 上限と下限 | 8時間以上にはしない。自分で縮めるときは、6時間までにとどめる |
昼間に忙しく過ごしている人は、もっと長い眠りが要ることもあります。
寝床で眠れないまま考えごとをするのは避け、眠くなってから戻ります2。寝床にいる時間を絞って眠りを深くする方法は、不眠は、薬の前に「眠りの練習」で、手順を詳しく紹介しています。昼間に体を動かすことも、夜の眠りを助けます(動くと、眠れる)。
朝早く目が覚めるとき
夕方に眠くなって早く寝る。そのぶん朝早く目が覚める。体内時計が早まった人に多い形です2。
朝日を浴びると体内時計が整う、とよくいわれます。ただし、もともと早寝早起きが強すぎて困っている人は、早朝に強い光を浴びると、かえって朝型が強まる可能性があります2。朝早く目が覚める人24人の小さな試験では、夕方に明るい光を2晩浴びたグループで体内時計が約2時間遅れ、夜中に目が覚めている時間が減りました5。朝の散歩を日の出前後にしている人は、時間を少し遅らせるのも一つの方法です。
早朝の目覚めが、眠りだけの問題ではないこともあります。不眠は、うつ病の始まりとして現れることが多いからです2。気分の落ち込みを伴うときの目安は、最後の表にあります。
目が覚める原因が、ほかにあることも
年齢による変化だけでなく、ほかの原因が隠れていることもあります2。
夜中に目が覚める、ほかの原因思い当たるものはありますか
| 原因 | 手がかり | くわしく |
|---|---|---|
| トイレ | 夜中にトイレで起きる。塩分の多い食事で増えやすい | 減塩も、夜中のトイレを減らす助けに |
| 寝る前のお酒 | 寝つきはよいのに、夜の後半に目が覚める | お酒は「グラム」で数える |
| いびき・呼吸が止まる | 家族に指摘される。昼間に強い眠気 | 睡眠時無呼吸 |
| 痛み | 寝返りのたびに、腰や膝、肩が痛む | 痛みで眠れないとき |
| 脚の不快感 | 夕方から夜、じっとしていると脚がむずむずして動かしたくなる | 眠りの専門医に相談 |
| 寝室の環境 | テレビや照明をつけたまま寝る。暑い・うるさい | 明かりと音を消し、夏は冷房を |
関連する記事:お酒は「杯」でなく「グラム」で数える・いびきと昼の眠気 ― 睡眠時無呼吸・痛みで眠れないとき
よく聞く「眠りの常識」を確かめる
よく聞く「眠りの常識」を確かめる国の睡眠ガイドと研究から
| よく聞く話 | 確かめたこと | 判定 |
|---|---|---|
| 誰でも8時間は眠るべき | 必要な眠りは年齢とともに短くなる。高齢の方は、寝床にいる時間を8時間以上にしないのが目安 | × |
| 眠れなくても、横になっていれば体は休まる | 寝床で眠れずに過ごすほど、眠れないことへの緊張が強まり、悪循環になる | × |
| 早く寝床に入れば、寝不足を取り戻せる | 一晩に眠れる時間には限りがある。早く入っても寝つけず、眠りが浅くなる | × |
| 寝酒をすると、よく眠れる | 寝つきはよくなるが、夜の後半の眠りが悪くなり、目が覚めやすくなる | × |
| 朝日を浴びれば、早朝の目覚めは治る | 体内時計を整える基本。ただし早寝早起きが強すぎる人では、朝型がさらに強まる可能性がある | △ |
こんなときは、受診を
こんなときは、受診を眠りの悩みの陰に、別の病気があることも
| こんなとき | どうする |
|---|---|
| 朝早く目が覚め、気分が沈む・何をしても楽しくない日が続く | かかりつけ医か、心療内科・精神科へ |
| いびきが大きく、呼吸が止まっていると言われる。昼間に強い眠気がある | かかりつけ医か、睡眠の専門医へ |
| 生活を見直しても眠れず、昼間の生活に支障が続く | かかりつけ医か、睡眠の専門医へ |
| 夜中のトイレが急に増えた | かかりつけ医へ |
睡眠薬を飲んでいる人は、自分の判断でやめず、処方した医師に相談してください。
まとめ
- 夜中や朝早くに目が覚めるのは、年齢とともに増える変化。昼間が元気かどうかが分かれ目。
- 長く寝床にいるほど、眠りは浅くなる。寝床にいる時間は実際に眠っている時間+30分、8時間以上にしない。
- 朝早く目が覚める人は、早朝の強い光でかえって朝型が強まることがある。
- トイレ・お酒・いびき・痛みなど、目が覚める原因がほかにないかを見る。