枕で大切なのは、素材より高さです。そして、高すぎる枕には、首の血管を傷める危険があるという日本の研究があります3。お店で抱いた感じではなく、ひと晩寝たあとの朝の首で選びましょう。

枕を替えるだけでは、首の痛みはあまり変わらない

長引く首の痛みがある人を4つの組に分けたカナダの試験があります。首の運動をする組、首を支える枕を使う組、その両方をする組、どちらもしない組です。枕だけの組では、痛みははっきり変わりませんでした。枕と首の運動を組み合わせた組で、はじめて差が出ました1。

ほかの試験をまとめた最近の研究でも、ラテックス、ウレタン、ふつうの枕のどれかが明らかに優れているとは言えませんでした2。ゴムやラテックスの枕で首の痛みが少⁠し⁠減るという別のまとめもありますが、効果は小さく、眠りの質は変わっていません4。

枕の研究には、枕を作る会社が関わったものも少なくありません5。テレビや広告で「この枕で肩こりが治る」と聞いたら、比べる相手を置いた試験なのか、誰が調べたのかを見てください。肩こりそのものへの手当ては肩こりのページにまとめています。

素材より、高さ

羽根の枕は、頭の重みで形が崩れやすく、首の角度が変わりやすいことがわかっています。ウレタン、ラテックス、ポリエステルの間では、大きな差はありませんでした6。素材は好みで選んでかまいません。

高さには、誰にでも合う「正解の何センチ」はありません7。体の大きさや肩幅、寝る向きで変わります8。目安は次のとおりです。

  • 横向きに寝るとき:肩の幅の分だけ高さが要ります。鼻、あご、胸の真ん中が、ほぼまっすぐ一列に並ぶ高さです。
  • 仰向けに寝るとき:横向きより低めで足ります。あごが上がらず、胸に押しつけられもしない高さです。
  • 寝返りがしやすいこと:眠っている間にも向きは何度も変わります。寝返りのしやすさは、枕の良し悪しを見るものさしの一つです。日本では、腰やお尻の痛みで寝返りがつらい人で、枕の高さを合わせると寝返りが速くなったという報告もあります9。

高すぎる枕は避ける

国立循環器病研究センターが、首の後ろを通る血管(椎骨動脈)の壁が裂ける病気と、枕の高さの関係を調べました。この病気になった人は、そうでない人より、12センチ以上の高い枕を使っていた人が多く、15センチ以上ではその差がさらに大きくなっていました3。研究者たちは、これを「殿様枕症候群」と名づけています。

人数の少ない研究で、高い枕が原因だと決まったわけではありません。それでも、首を強く曲げたまま長い時間眠ることは避けたほうがよいでしょう。枕を何枚も重ねて寝ている人は、一度見直してください。

背中が丸い人、首の骨を固定する手術を受けた人は「すき間を埋める」

ここからは、研究ではまだ確かめられていない部分です。背中が丸い人や、首の骨を固定する手術を受けた人の枕の高さを比べた試験は、まだありません。背骨の手術をしてきた整形外科医としての考えをお伝えします。

背中が丸くなっていると、仰向けに寝たとき、背中が先に布団につき、頭は宙に浮きます。低い枕では頭が後ろへ倒れ、首が反ります。首が反ると、首の骨の中を通る神経の通り道が狭くなることがわかっています10。かといって、枕を重ねて首を前へ曲げすぎると、のどの空気の通り道がつぶれやすくなります11。

答えは、首を曲げも反らせもせずに、頭の下のすき間を埋めることです。首の骨を固定する手術を受けた人も同じです。首が枕に合わせて動けないので、枕のほうを首に合わせます。手術の方⁠法や固定した範囲にかかわらず、考え方は変わりません。

背中が丸い男性が仰向けに寝て、頭の下のすき間をたたんだバスタオルで埋めている
背中が丸い男性が仰向けに寝て、頭の下のすき間をたたんだバスタオルで埋めている

背中の丸さそのものへの手当ては背中が丸くなるのページ、首が前に垂れてくる病気については首下がりのページをご覧ください。

合う高さは、バスタオルで探せる

高い枕を買う前に、家にあるバスタオルで試してみましょう。決まった手順を比べた研究はありませんが、お金をかけずにできる方⁠法です。

  1. いまの枕をはずすか、薄いものに替えます。
  2. たたんだバスタオルを頭の下に置き、1枚ずつ足したり減らしたりします。
  3. 横向き、仰向けの両方で、上の目安に合うか確かめます。
  4. 寝返りを何度か打ってみて、引っかかりがないか見ます。
  5. その高さで数日寝て、朝の首で決めます。
たたんだバスタオルを重ねて頭の下に置き、仰向けに寝る女性
たたんだバスタオルを重ねて頭の下に置き、仰向けに寝る女性

頭の重みで、枕は眠っている間に沈みます。数分横になっただけではわかりません。新しい枕を買うときは、試してから返品できるかを確かめておくと安心です。

旅先で眠れないのは、枕のせいだけではない

旅館やホテルで「枕が変わると眠れない」と感じる人は多いでしょう。初めての場所で寝ると、ひと晩目は脳の半分が見張りを続け、眠りが浅くなることがわかっています12。枕より、場所が変わったことの影響が大きいのです。

それでも、高さの合わない枕は寝つきを悪くします。旅先の枕が高すぎたり柔らかすぎたりしたら、部⁠屋のバスタオルをたたんで高さを合わせてください。家で見つけた「自分の高さ」を覚えておけば、どこへ出かけても再現できます。

枕を探す前に、受診したほうがよいとき

  • 朝の首の痛みが何週間も続く
  • 腕や手のしびれ、力が入りにくい、ボタンがかけにくい、字が書きにくい
  • 歩くとふらつく

首の骨や神経の病気が隠れていることがあります。枕を探す前に、整形外科を受診してください。