整形外科と接骨院・整体・カイロプラクティックの資格や歴史の違いは、看板の違いを、資格と歴史で見分けるにまとめました。この記事はその先の「では、どこへ行けばいいのか」です。

先に医師に診せたいサイン

こんなときは、どこへ行くか腰や背中、首、肩の痛み

こんなとき行き先
両脚のしびれや力の入りにくさ、尿や便が出にくい・漏れる、股のまわりの感覚が鈍いその日のうちに救急
首の痛みに加えて、急な強い頭痛、めまい、ろれつが回らない、片側の手足のしびれすぐに救急
50歳を過ぎて初めての腰痛・背中の痛み施術所より先に医療機関
転んだ、尻もちをついた、重い物を持ったあとの痛み(骨粗しょう症があればとくに)施術所より先に医療機関
夜も、横になっていても痛い。熱、体重が減る、だるさがある施術所より先に医療機関
がんやステロイドの治療を受けたことがある施術所より先に医療機関
片側でも、しびれや力の入りにくさがある施術所より先に医療機関
ひねった、ぶつけた、肉ばなれなど、はっきりしたけがで、上に当てはまらない整形外科でも接骨院でもよい(同じけがで両方に保険でかからない)
けがではない、長引く腰痛や肩こりで、上に当てはまらない自分で動くことが土台。施術は自費で、運動と組み合わせる。4〜6週で良くならなければ医療機関
出典:日本整形外科学会・日本腰痛学会「腰痛診療ガイドライン2019」BQ7 表1・CQ4・CQ8/NHS「Back pain」/Downie A, et al. BMJ 2013;347:f7095/Cooper C, et al. J Bone Miner Res 1992;7:221-7/Biller J, et al. Stroke 2014;45:3155-74/厚生労働省「柔道整復師の施術を受けられる方へ」

腰や背中の痛みのほとんどは、命にかかわる病気ではありません。ただ、まれに骨折やがん、感染や神経の強い圧迫が隠れています。診療ガイドラインは、これを見逃さないための目印を挙げています23。

施術所ではレントゲンやMRI、血液の検査ができません4。上の表に当てはまる人は施術所より先に医療機関で診てもらってください。両脚のしびれや力の入りにくさ、尿や便が出にくい・漏れる、股のまわりの感覚が鈍いときは、その日のうちに救急へ3。

50歳を過ぎてから気をつけたいのは、背骨の圧迫骨折です。骨粗しょう症があると、転んでいなくても重い物を持ち上げたくらいで背骨がつぶれることがあります5。専門の医師がレントゲンを読んでも見落とされることがあるほどで6、手で触っただけで見分けることはできません。転んだあとや尻もちをついたあとの痛みは、まず整形外科へ。

はっきりした「けが」のとき

ひねった、ぶつけた、肉ばなれをしたという原因のはっきりしたけがで上のサインがなければ、整形外科でも接骨院でもかまいません。接骨院で健康保険が使えるのは、こうした外傷性のけがです7。

気をつけたいのは2つです。まず、骨折と脱臼は応急手当を除いて医師の同意がないと接骨院で施術できません8。次に、同じけがで整形外科と接骨院の両方に健康保険でかかることはできません7。どちらに通うか決めて、もう一方には伝えておきます。

買い物の帰りに足首をひねり、段に腰かけて足首を押さえる男性
買い物の帰りに足首をひねり、段に腰かけて足首を押さえる男性

仕事中や通勤中のけがは、健康保険ではなく労災保険の扱いです9。

けがではない、長引く腰痛や肩こり

いちばん多いのはこちらだと思います。はっきりしたけがのない、続く腰痛や肩こりです。

まず保険の話をすると、単なる肩こりや筋肉の疲れには接骨院でも健康保険は使えません。全額が自己負担です7。整体とカイロプラクティックは、もともと保険の対象外です10。

次に効き目です。日本の腰痛の診療ガイドラインは、慢性の腰痛に対する運動療法を強く勧めています2。一方で手技の施術や鍼、マッサージについては、日本では根拠がそろっていないとして勧めるとも勧めないとも書いていません2。海外の研究をまとめると、慢性の腰痛に対する背骨の手技は運動など勧められている治療と同じくらいの効き目で、差は小さいものでした11。英国の公的な指針も、手技の施術は運動と組み合わせる場合に限って考えるとしています12。

私の考えも同じで、長引く腰痛や肩こりの土台は自分で体を動かすことです。施術を受けて楽になるなら、それを動き出すきっかけに使ってください。運動の進め方は膝や腰が痛いときの、動き方と肩こりは、ほぐすより鍛えるにまとめています。

川沿いの道を、腕を振って歩く女性
川沿いの道を、腕を振って歩く女性

施術を4〜6週続けても良くならないときや悪くなっているときは、医療機関で一度調べてもらってください213。骨粗しょう症や脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなどの診断を受けている人に強く押したりひねったりする施術をしないよう、国は1991年から通知しています13。

施術所で確かめておくこと

施術所で確かめておくこと国と保険者、消費者庁の資料から

確かめることなぜ
施術する人の国家資格は何か整体・カイロには国の資格がない
今日の施術は健康保険の対象か。対象外なら料金はいくらか肩こりや疲れは、接骨院でも保険の対象外
申請書の負傷名・部位・日数・金額を見てから署名する白紙への署名は、間違った請求につながる
領収証と明細書をもらって取っておく保険者から問い合わせが来たら、自分で答える
持病(骨粗しょう症、脊柱管狭窄症、心臓の病気など)と、病院で治療中のことを伝える病気によっては、強い施術が向かない
痛いと伝えたら、やめてもらう「好転反応」と言われて悪化した例がある
回数券の前に、解約と返金の条件を書面で見る店で結んだ契約にクーリング・オフはない
何回、何週で良くなる見込みかを聞く長引くときは医療機関で調べる
出典:消費者庁(2017年5月26日)/全国健康保険協会 船員保険部「柔道整復師(整骨院・接骨院)のかかり方」/厚生労働省 医事第58号(平成3年)/横浜市消費生活総合センター「整体やマッサージの回数券」

消費者庁には、資格制度のない整体やカイロプラクティック、リラクゼーションマッサージなどで体を傷めたという報告が2009年から2017年までに1,483件寄せられました10。神経や脊髄の損傷がいちばん多く、骨折もありました。治るまでに1か月以上かかった重い例は60歳代以上で目立っています10。肩をお願いしたのに胸を押されて肋骨が折れた60歳代の女性や、「好転反応だから続けて」と言われて悪化した50歳代の女性の例も載っています10。

ただし国民生活センターは国家資格を持つ人の施術による被害の相談もあると書いています4。資格があるかどうかだけで安全が決まるわけではありません。

首を強くひねる施術と首の血管が裂けて起きる脳卒中との関係も、よく話題になります。起きるとしてもまれで、施術が原因かどうかははっきりしていません1415。米国心臓協会は施術の前にこの関係を説明すべきだとしています15。首の痛みに加えて急な強い頭痛やめまい、ろれつが回らない、片側の手足がしびれるといった症状があれば、施術所ではなく救急へ。

回数券を買う前には解約と返金の条件を確かめておきます。店に出向いて結んだ契約にはクーリング・オフがありません16。財布の中で回数券がいちばん厚いカードになる前に、一度立ち止まって考えたいところです。困ったときは消費者ホットライン「188」に相談できます10。

まとめ

  • 50歳を過ぎて初めての腰痛、転んだあとの痛み、夜も横になっても痛い、しびれや力の入りにくさ、熱ややせ、がんやステロイドの治療歴があれば、施術所より先に医療機関へ。
  • 両脚のしびれ、尿や便の異常は、その日のうちに救急へ。
  • ひねった、ぶつけたというけがなら、整形外科でも接骨院でもよい。同じけがで両方に保険でかからない。
  • 長引く腰痛や肩こりは、自分で動くことが土台。施術は自費が原則で、運動と組み合わせて使う。
  • 4〜6週で良くならなければ、医療機関で調べてもらう。