「しみ」は医学の言葉ではなく、いくつかの別々の状態をまとめた呼び名です1。いちばん多いのは日光黒子(老人性色素斑)で、40歳を過ぎた頃から顔や手の甲、腕など日の当たる所に出てきます1。ここでは、しみの種類と親に似る分・自分で防げる分、日焼け止めの使い方をまとめます。

しみの種類

見た目は似ていても、しみの種類によって治療が違います。

しみの主な種類見た目と、出やすい人・場所

種類見た目出やすい人・場所
日光黒子(老人性色素斑)茶色からやや黒の平らなしみ。数ミリから1センチを超えるものまで40歳以上。顔・手の甲・腕など、日の当たる所
肝斑両頬に左右対称に広がる、ぼんやりしたしみ紫外線と女性ホルモンで濃くなる
脂漏性角化症少し盛り上がった、茶色から黒のできもの日の当たる所に多い

このほか、そばかす(雀卵斑)や、炎症のあとに残る色素沈着などがあり、同じ顔に混ざっていることも多い。

出典:日本美容外科学会ほか「美容医療診療指針」日美外報 2020/環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」

とくに肝斑は、日光黒子に使う強いレーザーで、かえって濃くなることがあります1。肝斑では日差しを避けることがいちばんの基本で、そのうえでトラネキサム酸の飲み薬が使われます12。いくつかの種類が同じ顔に混ざっていることも多いので1、治療を考えるならまず皮膚科でどのしみかを見てもらうところからです。

父に似る分、自分で変えられる分

しみは、親に似るのでしょうか。デンマークで59〜81歳の女性の双子102組の顔を調べた研究では、顔のしみの量の差のうち遺伝で説明できたのは、半分に届きませんでした3。残りは日差しなど暮らしの側です。日本人の女性1万1,311人の遺伝子を調べた研究でも、しみの出やすさに関わる場所がいくつも見つかっています4。

アジア人の肌は、しわよりも先にしみで年齢が見えやすいようです。中国とフランスの女性を同じ皮膚科医が診た研究では、中国の女性はしわの始まりが約10年遅い一方、40歳を過ぎるとしみが目立つ人がずっと多くなっていました5。

父から受け継いだものは変えられません。それでも、残りの半分あまりには手が届きます。環境省の資料によれば、お年寄りの顔や手の甲のしみは年齢だけでなく長年の紫外線による「光老化」の結果でもあり、紫外線を防げば防げるものです6。

日焼け止めで、どこまで遅らせられるか

オーストラリアで55歳未満の903人を、毎日日焼け止めを塗る人と、塗りたいときだけ塗る人に分けた試験があります。4年半後、毎⁠日⁠塗った人では肌の老化がはっきりとは進んでいませんでした7。ただしこの試験で測ったのは手の甲の皮膚のきめで、しみの数ではありません。

しみそのものを測った研究は、まだ小さなものです。50歳以上の女性17人が春から夏にかけて片方の手にだけ日焼け止め(SPF30)を塗った研究では、塗った手のしみは夏に濃くなるのが抑えられていました8。

同じオーストラリアの試験を10年後まで追うと、毎⁠日⁠塗った人では皮膚がんの一つであるメラノーマが少なくなっていました9。しみを遅らせるために塗っているクリームが、ほかのものも防いでいるかもしれません。

量と塗り直し

日焼け止めの効き目(SPF)は、決められた厚さで塗って測った値です。浜辺で42人が自分で塗った量を調べると、平均でその4分の1ほどでした10。塗ったという安心感だけが厚く、肝心の膜は薄くなりがちです。

日焼け止めの選び方と塗り方環境省の資料から

こんなときどうするか
洗濯物を干す、買い物に行く数値のそれほど高くないもので十分。SPFとPAの表示がある日中用の乳液やクリームでもよい
炎天下のスポーツ、ハイキング効果の高いものを選ぶ
海やプール水に強い(耐水性の高い)ものを選ぶ
顔に塗る量クリームはパール粒1個分、液状は1円玉1個分。伸ばしたら、同じ量をもう一⁠度⁠重⁠ねる
塗り直し2〜3時間おき。汗をふいたあとや、手でこすったあとも

SPFは日焼けを起こす紫外線(UV-B)を、PAはUV-Aを防ぐ目安。PAは+が多いほど効果が高い。

出典:環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」

環境省は、顔ならクリームをパール粒1個分、液状なら1円玉1個分を手に取り、額・鼻・両頬・あごに置いて伸ばし、同じ量をもう一⁠度⁠重⁠ねるよう勧めています。汗や手で落ちるので、2〜3時間おきの塗り直しも勧めています6。

玄関で、出かける前に顔に日焼け止めを塗る男性
玄関で、出かける前に顔に日焼け止めを塗る男性

曇りの日と、車の窓

薄い雲なら、紫外線の大半は通り抜けてきます6。窓ガラスは、日焼けを起こす紫外線(UV-B)はほとんど通しませんが、しみやしわに関わる紫外線(UV-A)は通します11。車のフロントガラスはUV-Aもよく防ぎますが、横の窓は車によって防ぐ程度にかなりの差がありました12。

米国で28年間、配達のトラックを運転してきた男性は、窓側にあたる顔の左半分だけ、皮膚が厚くなり深いしわが刻まれていました13。運転の時間が長い人は、窓側の頬にも塗っておくと安心です。

ビタミンDは足りなくなるか

日焼け止めを塗ると、実験では皮膚でビタミンDを作る働きが大きく下がります614。ただ、ふだんの暮らしで塗っている人の血液のビタミンDが下がるという証拠はほとんど見つかっていません14。ビタミンDは魚やきのこからもとれます6。骨のための食事は骨のために、何を食べるかにまとめています。

皮膚科でできること

皮膚科での主な治療しみの種類ごとに

しみ主な治療気をつけること
日光黒子(老人性色素斑)レーザー、光治療、液体窒素多くは自費。治療の前に、皮膚がんでないかを確かめる
肝斑日差しを避ける。トラネキサム酸の飲み薬など強いレーザーで、かえって濃くなることがある
脂漏性角化症切り取る、レーザーで削る悪性のものが紛れていないかを先に確かめる
出典:日本美容外科学会ほか「美容医療診療指針」日美外報 2020・2022/Panchal VS, et al. Indian Dermatol Online J 2024/厚生労働省 診療報酬点数表 J054-2 留意事項

年齢によるしみ(日光黒子)には、レーザーや光の治療が効くとされています。ただし長い期間の結果や、ほかの治療との比較はまだ十分ではありません1。

レーザーの前には、皮膚がんではないことを確かめる必要があります。指針も、いちばんの問題は悪性のものとの見分けだとしています。合わないレーザーを当てると後で見分けるのが難しくなるからです1。

盛り上がったしみ(脂漏性角化症)は、切り取るほかにレーザーで削る方⁠法もあります。こちらも悪性のものが紛れていないかを先に確かめます15。

費用にも注意が要ります。皮膚のレーザー治療は美容だけが目的なら保険が使えず、対象は太田母斑などの病気に限られています16。年齢によるしみの治療は、多くが自費になります。どの治療を選んでも、しみの元になった日差しは変わらないので、日焼け止めとの付き合いは続きます。

すぐ皮膚科へ行くしみ

こんなしみは、早めに皮膚科へ年齢のせいにしない

こんなとき考えられること
形がいびつ、ふちがぎざぎざ、色にむらがあるメラノーマなど
しみやほくろが大きくなってきた、色や形が変わってきたメラノーマなど
足の裏や手のひら、爪に黒い色が出てきた日本人に多い型のメラノーマのことがある
顔や手の甲に、赤くざらざらした所があって治らない日光角化症(皮膚がんの手前の状態)のことがある
出典:Abbasi NR, et al. JAMA 2004/日本皮膚科学会ほか「メラノーマ診療ガイドライン2025」/MSDマニュアル家庭版「日光角化症」

日本人のメラノーマは足の裏や手のひら、爪に出る型がいちばん多く、顔の日の当たる所に出る型もあります17。形がいびつ、ふちがぎざぎざ、色にむらがある、大きくなってきた、といった変化は、メラノーマを見分ける目安として使われています18。

顔や手の甲の赤くざらざらした所がなかなか治らないときは、日光角化症という皮膚がんの手前の状態のことがあります19。この段階で治療すれば、命に関わることはありません6。

よく聞く話を確かめる

しみの「よく聞く話」を確かめる研究と公的な資料でわかっていること

よく聞く話わかっていること判定
曇りの日は、日焼け止めはいらない薄い雲なら、紫外線の大半は通り抜ける×
しみの多い家系だから、防いでも同じ顔のしみの差のうち、遺伝で説明できるのは半分に届かない×
日焼け止めを塗るとビタミンDが足りなくなる実験では作る働きが下がるが、ふだんの暮らしで足りなくなる証拠はほとんどない△
家の中や車の中なら紫外線は届かない窓ガラスはUV-Aを通す。車の横の窓は、車によって防ぐ程度に差がある×
美白化粧品で、年齢のしみが消える年齢によるしみ(日光黒子)の治療として指針が挙げるのは、レーザー・光治療・液体窒素△
出典:環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」/Gunn DA, et al. PLoS One 2009/Neale RE, et al. Br J Dermatol 2019/Tuchinda C, et al. J Am Acad Dermatol 2006/Boxer Wachler BS. JAMA Ophthalmol 2016/日本美容外科学会ほか「美容医療診療指針」2020

健康情報の確かめ方は健康情報の読み方にもまとめています。

まとめ

  • しみにはいくつか種類があり、治療が違う。まず皮膚科で見てもらう。
  • 顔のしみの差のうち、遺伝で説明できるのは半分に届かない。残りは日差しの側。
  • 日焼け止めは、思っているより厚く塗り、2〜3時間おきに塗り直す。曇りの日と車の窓にも注意。
  • 年齢によるしみのレーザーは、多くが自費。レーザーの前に、皮膚がんでないかを確かめる。
  • 形がいびつ、色にむら、大きくなってきたしみ、足の裏や爪に出てきた黒い色は、早めに皮膚科へ。