LDLコレステロールは、血管の病気の原因の1つ

LDLコレステロールが血管の壁にたまると、動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞につながります。遺伝子の研究、長く追いかけた研究、薬の試験の3つの方⁠向から、LDLがこれらの病気の原因であることが確かめられています12。日本の地域の研究でも、LDLが高い人ほど心臓の病気が多くなっていました34。

50代は、LDLが上がりやすい年代です5。

50代の男性の4人に1人、女性の3人に1人がLDL 140以上50〜59歳(令和5年)

男性女性
LDL 140以上23%36%
LDL 160以上8%15%
LDL 180以上3%7%
コレステロールを下げる薬を飲んでいる12%13%

LDLは薬を飲んでいる人を含む値(男性156人・女性227人の人数から計算)。

出典:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査報告」第36表の1・第21表

女性は、閉経のころからLDLが上がる人が多くなります。

病気のない人は、まず生活から。目標は人によって違う

日本動脈硬化学会のガイドラインでは、心筋梗塞や脳梗塞をまだ起こしていない人は、まず食事・運動・禁煙などを3〜6か月続け、その結果を見てから薬を考えるのが原則です1。

LDLの目標は、全員同じではありません。年齢、性別、血圧、血糖、たばこなどから、この先10年に心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険を見積もり、その大きさで決めます1。

LDLの目標は、もともとの危険で変わる日本動脈硬化学会ガイドライン2022(mg/dL)

あなたの状況LDLの目標進め方
病気なし・危険が低い160未満まず生活を3〜6か月
病気なし・危険が中くらい140未満まず生活を3〜6か月
病気なし・危険が高い(糖尿病・腎臓病などを含む)120未満まず生活。必要なら薬
心筋梗塞・狭心症・脳梗塞を起こした100未満(場合により70未満)生活と薬を一緒に
出典:Okamura T, et al. J Atheroscler Thromb 2024;31:641-853(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版)Table 5

ただし、LDLが180 mg/dL以上のまま下がらないときは、生活の見直しと一緒に薬を考えてよい、とされています1。生まれつきLDLが高い体質(家族性高コレステロール血症)の人がいるからです。健診の数値の読み方全体は、健診の「要再検査」を、引き出しにしまわないにあります。

得る分は、もともとの危険の大きさで決まる

薬でLDLを下げると、心筋梗塞や脳梗塞は減ります。下げた量に比例して、危険の低い人でも高い人でも、同じ割合で減ることがわかっています6。日本人だけを対象にした試験でも、食事療法に薬を足すと、心臓の病気が減りました7。

日本人の試験でも、心臓の病気は約3分の1減った心臓・脳の病気のない日本人7,832人、平均5.3年

食事療法だけ食事療法+薬
心臓の病気(狭心症・心筋梗塞など)101件66件
1,000人あたりに直すと約25人約17人
がん・重い有害事象差なし差なし

1,000人あたりは各群の人数で割った計算。弱めの薬で、LDLの下がり方は2割弱でした。

出典:Nakamura H, et al. Lancet 2006;368:1155-63(MEGA試験)

けれど、「同じ割合」でも、もともとの危険が小さい人では、減る人数も小さくなります68。すでに心筋梗塞を起こした人と、危険の低い50代とでは、薬の意味の大きさが違います。

1,000人が5年飲んだら防げる人数と、起こる人数を同じ物差しで

1,000人あたり
防げる心筋梗塞・脳卒中など(すでに病気がある人)約100人
防げる心筋梗塞・脳卒中など(病気はないが危険が高い人)約50人
筋肉の病気(血液検査で大きな異常を伴う)1人未満
新たに糖尿病と診断5〜10人
脳出血1人未満

LDLを約77 mg/dL下げた場合の見積もり(1万人あたりの数を10で割った値)。

出典:Collins R, et al. Lancet 2016;388:2532-61

もう1つ、物差しの長さでも見え方が変わります1。

10年で見るか、一生で見るか45歳・LDL 160以上の人が、心臓の病気を起こす見積もり

この先10年一生のうち
男性100人に約4人100人に約47人
女性ほぼ0人100人に約10人
出典:吹田研究(日本動脈硬化学会ガイドライン2022 p.687に引用)

「10年では小さい」は、「何もしなくてよい」という意味ではありません。50代は、生活を変えておく意味が大きい年代です。

副作用は本物。でも、思われているより小さい

筋肉の痛み・だるさ

いちばんよく心配されるのが、筋肉の痛みやだるさです。

大きな試験を集めて、薬を飲んだ人と、見た目が同じにせの錠剤(偽薬)を飲んだ人を比べると、どちらも4人に1人あまりが、筋肉の痛みや力の入りにくさを訴えていました9。薬による上乗せがあったのは1年目だけで、1,000人に1年あたり約11件。薬を飲んだ人の筋肉の訴えのうち、本当に薬のせいだったのは15件に1件と計算されています9。

副作用で薬をやめた経験のある人に、薬・偽薬・空の瓶を1か月ずつ、本人にどれかわからないように使ってもらった試験もあります10。

偽薬でも、薬とほぼ同じだけ症状が出る副作用で薬をやめた60人が、1か月ずつ入れ替えて使った

その月に使ったもの症状の強さ(100点満点)
何も飲まない(空の瓶)8
偽薬(にせの錠剤)15
薬16

どの月が薬か、本人にはわかりません。薬と偽薬の差ははっきりしませんでした。試験のあと、半数の人が薬を再開しました。

出典:Howard JP, et al. J Am Coll Cardiol 2021;78:1210-22(SAMSON試験)

「飲んでいる」と思うだけで症状が出ることを、ノセボ効果といいます。日本のガイドラインも、筋肉の症状にはノセボ効果が関わると書いています1。

ただし、まれに重い副作用もあります。筋肉が壊れる横紋筋融解症です18。受診の目安は、このページの最後にまとめました。

糖尿病

スタチンを飲むと、血糖の値がごくわずかに上がります。HbA1c(1〜2か月の血糖の平均を表す値)で、平均0.06ポイントほどです11。そのため、もともと血糖が糖尿病の境目に近い人では、境目を越えて「糖尿病」と診断されるのが、少し早まります。新たに診断された人の10人に6人ほどは、飲み始める前から血糖が高めの4分の1に入っていた人でした11。

つまり、増えるのは「糖尿病と診断される人の数」で、その多くは、血糖が正常な人が急に糖尿病になるのではなく、境目近くの人が境目を越える、という形です。数にすると、弱め〜中くらいの強さの薬で、1年に1,000人あたり約12人が約13人になる程度です11。心臓や血管を守る効果は、この分を差し引いたうえでの数字です118。

物忘れ・がん

物忘れや認知機能の悪化は、試験では見られませんでした12。逆に、認知症を防ぐ効果もありません12。がんが増えることもありませんでした67。

動画やSNSでよく見る話を確かめる

スタチンの話題は、動画やSNSでもよく見かけます。主なものを、研究で確かめました。

「スタチンの常識」を研究で確かめる○=研究で支持 △=一部だけ ×=研究と合わない

よく見る話研究でわかったこと判定
日本人には要らない日本人でもLDLが高いほど心臓の病気が多く、日本の試験でも減った×
CoQ10のサプリで副作用を防げる研究の結論が割れている△
出典:本記事の出典1〜16/Banach M, et al. Mayo Clin Proc 2015/Qu H, et al. J Am Heart Assoc 2018

「コレステロールは高いほうが長生き」は本当?

コレステロールが低い人のほうが早く亡くなる、という調査は実際にあります13。けれど日本の全⁠国⁠調⁠査では、最初の5年に亡くなった人を除くと、その関係は消えました4。肝臓の病気などで弱っている人は、もともとコレステロールが低くなるためです。病気がコレステロールを下げていたのであって、コレステロールが低いから早く亡くなったのではありません。日本動脈硬化学会も、この「因果の逆転」を指摘しています14。薬でLDLを下げた試験では、亡くなる人全体も少し減りました6。

「薬が怖いから、紅麹のサプリにする」

紅麹には、コレステロールを下げる薬と同じ仕組みの成分が含まれることがあります15。2024年には、紅麹を使った機能性表示食品で、腎臓の健康被害が相次ぎました。詳しくはサプリメントの広告を読むにあります。薬の代わりに自分の判断でサプリにかえることは、勧めません。

自分の判断でやめる前に

デンマークの全⁠国⁠調⁠査では、スタチンに否定的な報道が出た時期に、早く薬をやめる人が増えていました。早くやめた人は、続けた人より心筋梗塞が多くなっていました16。この調査だけで原因とは言い切れませんが、怖い話を見てすぐやめるのは、いちばん損な選び方かもしれません。

気⁠に⁠な⁠る症状があるときは、処方した医師か薬剤師に相談してください。薬の種類や量を変える、ほかの薬に切りかえるなど、選択肢があります117。75歳を過ぎてから始めるか、続けるかは、ほかの病気や体力も含めて、主治医と決めることです。

こんなときは、受診や相談を

飲んでいて、気⁠に⁠な⁠る変化があったら自分の判断でやめる前に

気になる変化どうする
強い筋肉の痛み・力が入らない・尿がコーラのような濃い茶色その日のうちに受診
筋肉の痛み・だるさが続く次の受診を待たずに、処方した医師か薬剤師に相談
健診でLDL 180以上。親やきょうだいに若くして心筋梗塞になった人がいる。アキレス腱が太い、手や肘に黄色いこぶがある生まれつきLDLが高い体質かもしれない。早めに受診
すでに心筋梗塞・狭心症・脳梗塞を起こした薬の意味がとくに大きい。自分の判断でやめない
ほかの薬やサプリを始めたい処方した医師か薬剤師に伝える。一緒に飲むと筋肉の副作用が起きやすくなる薬がある
出典:日本動脈硬化学会ガイドライン2022/Collins R, et al. Lancet 2016/Nielsen SF, et al. Eur Heart J 2016

まとめ

  • LDLコレステロールは、心筋梗塞や脳梗塞の原因の1つ。50代は上がりやすい。
  • 病気のない人は、まず生活を3〜6か月。目標は、もともとの危険の大きさで変わる。
  • 薬の効果は「同じ割合」。でも、危険が小さい人ほど、得る人数も小さい。
  • 副作用は本物だが小さい。筋肉の訴えの多くは薬のせいではなく、糖尿病の診断は少し増える。物忘れ・がんは増えない。
  • 動画を見て不安になったら、やめる前に、処方した医師か薬剤師に相談を。