同意書は、施術のやり方を医師が決めた書類ではありません。この違いを知っておくと、医師に頼むときも施術を受けるときも話がかみ合いやすくなります。
同意書は何を確かめる書類か
はり・きゅうで健康保険が使えるのは、神経痛やリウマチ、頸腕症候群、五十肩、腰痛症、頸椎捻挫後遺症の6つの病気などで医師の同意書があるときです1。マッサージは、筋肉のまひや関節が固まって動かないなど医療としてマッサージが必要なときに限られます。疲れをとる、くつろぐ、病気を予防するといった目的は対象外です1。
同意書は、医師が患者を診察して「この人の病状は保険の対象に当たる」と確かめたことを示す書類です。医師は診察しないで同意してはいけない決まりがあり23、2026年7月からはオンライン診療で同意書を出すこともできなくなりました4。「書類だけ書いておいてください」とは頼めない、ということです。

一度の同意で保険が使えるのは6か月までで、続けるにはもう一度診察を受けて同意書をもらいます1。
「指示」と「同意」
医師の「指示」と「同意」の違い病院のリハビリと、保険での施術
| 病院のリハビリ(理学療法士) | はり・きゅう | マッサージ | 接骨院の骨折・脱臼(柔道整復師) | |
|---|---|---|---|---|
| 医師との関係 | 法律で「医師の指示の下に」 | 医師の「同意」(同意書) | 医師の「同意」(同意書) | 法律で医師の「同意」 |
| 医師が決めること | 何をどれだけするか | 保険の対象になる病状か | 医療としてマッサージが必要か、部位、訪問が要るか | 骨折・脱臼の施術をしてよいか |
| 回数ややり方 | 医師の管理の中で決まる | 医師は決めない | 医師は決めない | 医師は決めない |
| 医師の診察 | — | 必要(オンライン診療では出せない) | 必要(オンライン診療では出せない) | 診察したうえで(口頭でもよい) |
| 有効な期間 | — | 6か月 | 6か月(変形徒手矯正術は1か月) | 定めは見当たらない |
| 施術の結果への医師の責任 | 医療機関の中で負う | 負わないと国が明記 | 負わないと国が明記 | — |
病院のリハビリで運動を教える理学療法士は、法律で「医師の指示の下に」働くと決められています5。何をどれだけするかは、医師の管理の中で決まります。
はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師に保険で求められているのは、医師の「同意」です。同意書の様式には、施術の回数ややり方を書く欄がありません1。国は医師に向けたお知らせで、こう書いています。「同意した保険医は、はり、きゅう又はあん摩マッサージ指圧の施術結果に対して責任を負うものではありません」1。
施術所で「先生の指示のもとで施術しています」と聞くことがあるかもしれません。制度の上で医師が決めているのは保険の入口までで、その先の回数や中身は施術者と患者のあいだで決まります。マッサージの同意書には施術する部位や訪問の必要まで医師が書く欄があり、はり・きゅうより一歩踏み込んでいます1。それでも回数ややり方を医師が決める仕組みはありません。

医師が慎重になるわけ
医師が守る国の決まりは、同意書を出すよう求める形ではなく、「みだりに同意を与えてはならない」という向きに書かれています2。医師が同意書を断ることもあります。
慎重になる理由は、国の会議の資料にも出てきます。
- 訪問や出張での施術の料金をめぐる不正が、不正請求などの事例の多くを占めていた6。
- 不正請求の調べで、施術者が日付の入っていない、いわば白紙の同意書を何枚も持っていたことがわかった7。
- 「医師の同意は当方で代行します」とホームページに書く事業者がある、と保険者の委員が指摘した8。
整形外科の外来でも、同意書を頼まれることはよくあります。私が引っかかるのは、書いたあとにどんな施術が何回行われているのかが、医師からは見えないことです。自分の署名が見えないところで使われるかもしれない。この心配が、病院の医師が慎重になる背景にあります。
一方で施術者の団体の委員は、同じ会議で「同意書を書いていただけなくて困っているという声のほうが圧倒的多数」だと述べています8。様式が複雑になると施術を必要とする患者が同意書を受けられなくなる、という心配も出ています8。医療の側からは、同意書は施術の中身を保証するものではない、という意見も出ています9。
頼む前に、受けている間に
同じ病気で病院の治療を受けているとき
はり・きゅうは、同意した病気について病院で薬や注射などの治療を受けていると治療が優先され、療養費は出ません1。マッサージは、病院で医療としてのマッサージを受けた日には使えません1。どちらを続けるかを、医師と相談して決めることになります。
毎月の書類と、回数
保険で施術を受けると、毎月申請書に署名を求められます。日付と施術の中身を見てから署名し、写しか明細書を受け取ってください6。保険者から施術の中身や回数を問い合わせる手紙が来ることもあります7。記録を取っておけば、自分で答えられます。
月に16回以上の施術が長く続くと、理由を書いた書類が求められたり、いったん全額を払って後から請求する形に切り替えられたりします7。
「同意書はこちらで用意します」
同意書は、患者を診た医師が書くものです。代わりに用意する、取ってくるという申し出があったら、いったん立ち止まってください8。
医師のところへ戻るとき
同意書をもらった病気が良くならない、しびれや力の入りにくさが強くなった、新しい痛みが出た、転んだ。こういうときは次の同意書を待たずに医師に診てもらってください。
まとめ
- 同意書は、医師が診察して「保険の対象に当たる病状」と確かめた書類。施術の回数ややり方を医師が決めた書類ではない。
- 医師は施術の結果に責任を負わないと、国が書いている。
- 診察なし、オンライン診療では出せない。有効なのは6か月。
- はり・きゅうは、同じ病気で病院の治療を続けていると保険が使えない。
- 申請書は中身を見てから署名する。代わりに同意書を用意するという申し出には注意。
接骨院・整体・カイロとの違いは看板の違いを、資格と歴史で見分ける、どこへ行くかの目安は腰や肩が痛いとき、どこへ行くかにまとめています。