認知症を防ぐと「確かめられた」サプリメントや食品は、今のところ一つもありません。はっきりしているのはむしろ逆の結果で、大きな試験で期待ほどの効果が確認されなかったものがいくつもあります。世界保健機関(WHO)の指針も、ビタミンB・Eや魚の油などのサプリメントを認知症の予防のために勧めるべきではないとしています1。
よく見かける方法を、次の3つに分けて判定しました。
- 確かめられた:くじ引きでグループを分けて比べる試験(ランダム化比較試験)で、くり返し効果が示されたもの
- 期待されている:人を観察した研究や小さな試験で良い結果があり、大きな試験での確認を待っているもの
- 根拠が乏しい・否定された:人での試験がほとんどないもの、または大きな試験で期待ほどの効果が確認されなかったもの
認知症予防をうたうサプリ・食品の判定「確かめられた」に届いたものは、ひとつもありません
| 方法 | 判定と一言 |
|---|---|
| イチョウ葉 | 否定された:75歳以上の大きな試験で、認知症は減らなかった |
| 魚の油(DHA・EPA)のサプリ | 否定された:健康な人でも物忘れを気にする人でも、差が出なかった |
| ビタミンD | 否定された:大きな試験で、頭のはたらきに差が出なかった |
| ビタミンB群(葉酸・B6・B12) | 否定された:健康な人の多くの試験で、ほぼ効果なし |
| マルチビタミン | 根拠が乏しい:検査の点はわずかに良くなったが、認知症は減らなかった |
| ココア(カカオ)の成分 | 根拠が乏しい:全体では差が出なかった |
| ココナッツオイル・MCTオイル | 根拠が乏しい:予防の試験がない。最大の試験でも期待ほどの効果なし |
| プラズマローゲン・ヤマブシタケ・ウコン | 根拠が乏しい:人の試験が小さいか、主な評価で差なし |
| 「記憶の維持」の機能性表示食品 | 国は審査していない。「予防」とは表示できない決まり |
WHOの指針(2019年)も、ビタミンB・Eや魚の油などのサプリを認知症の予防のために勧めるべきではないとしています。
食事法・脳トレ・新しい話題の判定「期待されている」はあっても、確定したものはまだありません
| 方法 | 判定と一言 |
|---|---|
| MIND食 | 否定された:食事を変えてもらった試験では、差が出なかった |
| 地中海式の食事 | 期待されている:検査の点が良くなった。認知症は見ていない |
| 脳トレのアプリ・ゲーム | 根拠が乏しい:練習したゲームが上手になる |
| 処理速度の訓練 | 期待されている:1つの試験で、認知症の診断が少なかった |
| アルミの鍋・缶・制汗剤 | 根拠が乏しい:人では確かめられていない |
| 帯状疱疹ワクチン | 期待されている:複数の国で認知症の診断が少ない。批判もある |
| GLP-1受容体作動薬 | 根拠が乏しい:早いアルツハイマー病の試験で、進行を遅らせる効果は確認されず。予防は未検証(糖尿病・肥満症の治療薬) |
| 歯と口の健康 | 期待されている:歯が少ないと認知症が少し多い(観察研究) |
| 体を動かす | 期待されている:WHOが強く勧めている |
| 血圧・糖尿病・聞こえを整える | 期待されている:変えられる因子に挙げられている |
くじ引きで分けた試験でくり返し確かめられた予防法は、この表の中にはまだありません。
では、何を見直せばよいのか。血圧や糖尿病、体を動かすこと、聞こえ、人とのつながりは、認知症のなりやすさに関わる「変えられる因子」として専門家の委員会が挙げています[^lancet]。サプリメントより先に手をつけたいのは、こちらです。くわしくは認知症の「なりやすさ」には、変えられるものがあるに、聞こえは聞き返しが増えたらにまとめています。

サプリメントと「機能性表示食品」
大きな試験で、差が出なかったもの
イチョウ葉は、米国で75歳以上の3千人あまりを6年ほど追った試験で認知症を減らしませんでした。物忘れを気にするフランスの70歳以上の人を5年追った試験でも、アルツハイマー病は減りませんでした2。
魚の油(DHA・EPA)のサプリメントも、健康な60歳以上の人が2〜3年飲んだ試験と、記憶の衰えを気にする70歳以上の人が3年飲んだ試験のどちらでも頭のはたらきに差は出ませんでした3。同じ米国の試験では、ビタミンDでも差は出ていません4。これはサプリメントの結果で、魚を食べることの良し悪しを示したものではありません。
ビタミンB群(葉酸・B6・B12)は、健康な中高年を対象にした多くの試験をまとめても頭のはたらきへの効果はほとんどありませんでした5。血液中のホモシステインという物質が高い人で脳の萎縮がゆるやかになった試験はありますが、試験は1つで、認知症になるかどうかは見ていません6。
マルチビタミンは米国の試験で記憶などの検査の点がわずかに良くなりました。ただ、認知症やその手前の段階になる人は減りませんでした7。ココアに含まれる成分(フラバノール)も、全体では差が出ていません8。
なお、ビタミンやミネラルの試験で、60歳になる前から飲み始めた人を調べたものはほとんどありません5。心臓の病気やがん、骨折についての大きな試験はサプリメントより先に、見直したいことにまとめています。
すでに病気のある人の試験しかないもの
ココナッツオイルやMCTオイル(中鎖脂肪酸という油)の試験は、どれもすでに軽度認知障害(物忘れはあっても日常の生活は自分でできている状態)やアルツハイマー病のある人が対象です。健康な人が予防のためにとる試験は見当たりません。その中でいちばん大きな試験でも、期待された効果は確認されませんでした。一部の検査が良くなった小さな試験はあります9。
日本で試されたホタテ由来のプラズマローゲンという成分も、軽いアルツハイマー病などの人の試験で主に見た検査に差は出ませんでした。ヤマブシタケというきのこの試験は30人の1つだけです10。
「記憶の維持」と書かれた機能性表示食品
機能性表示食品は、会社が自分の責任で効き目の根拠を消費者庁に届け出るしくみです。特定保健用食品(トクホ)と違って、国は審査をしていません11。
根拠は、その商品で試験をしていなくても成分についての論文をまとめたものでかまいません。良い結果の論文が良くない結果の論文より少なくても、理由を説明すれば「肯定的」と判断できる決まりです12。
表示できるのは、病気でない人の健康の維持や増進に役立つという範囲までです。「予防」「治療」のような医学的な言葉は使えません12。パッケージに「記憶の一部を維持」とあっても、認知症の予防をうたうことはできない決まりです。
2022年には物忘れに関わる機能性表示食品の広告に行き過ぎた表示が多く見つかり、国が一斉に指導しました。消費者庁は、こうした広告を信じると適切な診療を受ける機会を逃すおそれがあると注意しています13。広告の読み方はサプリメントの広告を読むにまとめています。
食事法、脳トレ、アルミの鍋
「認知症が半分に」という食事法
雑誌でよく紹介されるMIND(マインド)食は、もともと米国でふだんの食事を聞き取って追いかけた研究から生まれました。よく守っている人ほど、アルツハイマー病が少なかったという結果です。「半分に」という数字は、ここから来ていると考えられます14。
ところが600人あまりに実際にこの食事を3年続けてもらった試験では、少しカロリーを控えたふつうの食事の人と差がありませんでした。どちらのグループも、検査の点は上がっていました14。よく守る人は、ほかの暮らし方も違うのかもしれません。「関連がある」と「原因である」の違いは、健康情報の読み方にくわしく書いています。
オリーブ油やナッツを足した地中海式の食事は、スペインの試験で頭のはたらきの検査の点が良くなりました。ただし、認知症になるかどうかは見ていません15。WHOは、地中海式の食事を「勧めてもよい」としています1。こちらは「期待されている」に入ります。
マウスで効いても、人で効くとは限らない
カレーのスパイスのウコンに含まれるクルクミンは、動物の研究では記憶の改善が一貫して見られます。ところが人の試験をまとめると頭のはたらき全体には差がありませんでした10。
2022年に国が指導した広告には、「アルツハイマー病のモデルマウスで記憶障害が改善」という表示もありました13。動物の結果は、人で確かめる理由にはなりますが、人で効く証拠ではありません。
脳トレのアプリやゲーム
脳トレを続けると、練習した課題は上手になります。けれども、ほかの頭のはたらきが良くなる証拠や認知症を防ぐ証拠は足りていません16。
毎日続けたゲームは確かに上達します。上達するのは、主にそのゲームです。
米国の大きな試験では、画面に出るものを素早く見分ける「処理速度」の訓練を受けた人で、長く追ったあとの認知症の診断が少なかったという分析があります。1つの試験の追加の分析で、市販のゲームとは別のものです17。米国では、脳トレの会社が「認知症を防ぐ」と宣伝して国の機関から訴えられ、お金を払って和解した例もあります18。
人と会う、出かける、働く、趣味を楽しむ。どれも頭をたくさん使います。「おでかけ」が、頭と体を守るもご覧ください。
アルミの鍋と制汗剤
アルミの鍋や缶、制汗剤で認知症になるという話は、人では確かめられていません。制汗剤などを調べた古い調査は結果が食い違い、著者自身が結論は出せないとしています。飲み水に含まれるアルミの量との関連を報告した研究はあり、議論は続いていますが、鍋や缶の話ではありません19。
ニュースになった3つの話
帯状疱疹ワクチン
帯状疱疹のワクチンを受けた人で認知症の診断が少なかったという研究が、いくつかの国から出ています。
生まれた週で分かれた、帯状疱疹ワクチンの接種英国ウェールズ。1933年9月2日生まれが境目
ほとんど同じ年齢の人が、偶然の線引きで分かれました。この差を使って、その後の認知症の診断を比べています(自然実験)。
英国のウェールズでは、生まれた日で接種の対象が分かれました。生まれたのが1週間違うだけで、受けた人がほとんどいない側と半分近くが受けた側に分かれています。こうした偶然の線引きを使って比べる方法を「自然実験」と呼びます。対象になった側では、その後の認知症の診断が少なくなっていました。オーストラリアとカナダでも同じ向きの結果です20。
ただし、効果が大きすぎてワクチンだけでは説明できないという指摘があります。接種が始まったあと国全体で認知症が減った形跡も見られません21。くじ引きで分けた試験は、まだありません。これらの研究の多くは生ワクチンを調べたもので、もう一つの組換えワクチンのデータは、まだ観察研究だけです20。
日本では2025年度から、65歳の人などが帯状疱疹ワクチンの定期接種の対象になりました22。帯状疱疹を防ぐために、定期接種の対象なら受ける価値があります。認知症への効果は、まだ研究中です。ワクチンの種類は、かかりつけ医と相談してください。
GLP-1受容体作動薬
GLP-1受容体作動薬は、糖尿病や肥満症の治療に使われている薬です。糖尿病の人を観察した研究では、この薬を使っている人に認知症が少なかったと報告されています23。
ところが、早い段階のアルツハイマー病の人3,800人あまりに飲み薬のタイプを2年使ってもらった試験では、進行を遅らせる効果は確認されませんでした24。認知症を予防するかどうかを確かめた試験は、まだありません。糖尿病や体重の治療として、主治医と相談して使う薬です。認知症の治療薬については、認知症の新しい薬にまとめています。
歯周病と口の健康
歯が少ない人や歯周病が重い人では、認知症が少し多いことが日本を含む観察研究で報告されています。日本の調査では、食べる量や出かける回数、人づきあいが減ることを通じた関わりも見えてきました25。
「歯周病の菌が認知症の原因」という説は、死後の脳やマウスの研究が中心です。菌の毒素を止める薬をアルツハイマー病の人で試した試験では、期待された効果は確認されず、肝臓の検査値が上がる人もいました。その後、米国で試験の差し止めを受けています26。
歯の治療や入れ歯は、よく食べてよく話し、出かけるために役立ちます。認知症のためと考えなくても、口の健康を保つ理由は十分にあります。
サプリより先にできること、相談の窓口
「期待されている」側の地味なこと
血圧や糖尿病を整える、体を動かす、聞こえを補う、人と会う。どれも派手さはありませんが、研究の積み重ねがあるのはこちらです。体を動かすことは、WHOも強く勧めています1。
補聴器そのものが認知症を防ぐかは、全体としてはまだ確かめられていません。それでも、聞こえて話が通じること自体に、はっきりした効果があります。くわしくは認知症の「なりやすさ」には、変えられるものがあると聞き返しが増えたらをご覧ください。

サプリメントを飲む前に
- 薬を飲んでいる方、治療中の方は、始める前に医師か薬剤師に相談してください。
- 飲み始めて体調が変わったら、やめて受診してください。パッケージは捨てずに持っていきます。
- 物忘れが気になるときに、サプリメントで様子を見るのは避けてください13。
物忘れが気になったら
- まずは、かかりつけ医に相談しましょう。
- くわしい検査が必要なときは、もの忘れ外来や認知症疾患医療センター(脳神経内科・精神科・老年科など)を紹介してもらえます。
- どこに相談すればよいかわからないときは、お住まいの地域包括支援センターへ。
治療で良くなる物忘れや、すぐに受診したほうがよい場合は、物忘れが気になったらにまとめています。認知症の血液検査は血液で認知症がわかる時代?、遺伝子のAPOEについては認知症は遺伝子で決まる?をご覧ください。
[^lancet]: Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.(世界の専門家の委員会の報告。認知症のなりやすさに関わる変えられる14の因子を挙げた。くわしくは「認知症の『なりやすさ』には、変えられるものがある」のページに)