認知症は、年齢や遺伝だけで決まるわけではありません。なりやすさには、自分で変えられるものがいくつもあります1。

ここでいう「予防」は、「遅らせる」こと

国は、認知症の「予防」を、「認知症にならない」ことではなく、「なるのを遅らせる」「なってからの進みをゆるやかにする」ことと定めています2。

気をつけていても、認知症になる人はいます。なった人や家族を責める話ではありません。なってからも、自分らしく暮らしていけることが大切だと、国の計画も書いています3。

変えられる14の因子

世界の専門家の委員会は、認知症のなりやすさに関わる、変えられる因子を14挙げています1。

認知症の、変えられる14の因子人生の時期ごと(Lancet委員会 2024)

時期因子
若いころ教育の機会
中年期(45〜65歳ごろ)聞こえにくさ・高いLDLコレステロール・うつ・頭のけが・運動不足・糖尿病・喫煙・高血圧・肥満・多量の飲酒
高齢期人とのつながりが少ないこと・大気汚染・見えにくさ

早く始めるほどよい。でも、遅すぎることはない。

出典:Livingston G, et al. Lancet 2024;404:572-628

多くは、おおよそ45〜65歳の中年期の因子です。委員会は「早く始めるほどよい。でも、遅すぎることはない」と書いています1。70代、80代でも、人とのつながりや見え方など、できることがあります。

「これらを全部なくせば、認知症の半分近くを防げる」と紹介されることがあります。ただしこれは、14の因子が原因だと仮定して、世の中から完全になくせた場合の計算上の見積もりです。一人ひとりのなる確率が半分になる、という意味ではありません14。

聞こえにくさを、先送りしない

聞こえにくさは、中年期の大きな因子のひとつです。日本のデータで計算し直すと、14の因子の中で上位に入ります14。

補聴器が認知症を防ぐかどうかは、大きな試験で、全体としては確かめられませんでした。危険因子の多い人たちのグループでは、差がありました5。

それでも、聞こえは、会話やおでかけ、仕事を続けるために大切です。テレビの音が大きいと言われる、聞き返しが増えた、というときは、耳鼻咽喉科で相談しましょう。日本では、聞こえにくさを自覚していても、補聴器を使っていない人が多いことがわかっています6。

見えにくさも同じです。白内障などを「まだいい」と先送りせず、眼科で相談しましょう1。

血圧、血糖、コレステロール

中年期の高い血圧、糖尿病、高いLDLコレステロールも、因子に入っています1。健診で「高め」と言われたら、主治医と相談してください。薬のことも、自分の判断でやめたり変えたりせず、主治医と決めましょう。

体を動かす、人と会う、まとめて見直す

体を動かしている人は、認知症が少ない傾向があります。ただし、運動だけで頭のはたらきが良くなるかどうかは、研究によって結果が分かれています78。

運動、食事、人付き合い、血圧などの管理をまとめて見直す試験では、頭のはたらきの成績がわずかに良くなりました9。日本の試験では、全体では差が出ませんでしたが、運動の教室に続けて参加した人では、良い結果が見られました10。

一度に全部ではなく、続けられることを1つずつ。家でできる筋トレは鍛えるのページに、人と出かけることについては「おでかけ」が頭と体を守るにあります。

脳トレだけで、大丈夫?

短い期間の脳トレは、長く続く効果が確かめられていません1。日本の試験でも、タブレットでの脳トレは、あまり続きませんでした10。人と会う、出かける、働く、趣味を楽しむことも、頭をたくさん使っています。

日本では、認知症の割合は下がってきています

認知症の人の数は、長生きの人が増えて多くなっています。けれども、同じ年齢で比べると、認知症になる人の割合は、近年下がってきていることが、日本の町の長い調査からわかっています11。

こんなときは、早めに相談を

  • 同じことを何度も聞く、約束や薬を忘れて生活に困る
  • お金の管理や料理の段取りが、難しくなってきた
  • 数日から数週間で、急に混乱したり、歩き方が変わったりした
  • 転んで頭を打ったあとから、様子が違う
  • 急に片方の耳が聞こえなくなった(すぐに受診を)

物忘れが気になったときは、かかりつけ医か、お住まいの地域包括支援センターに相談してください12。くわしくは物忘れが気になったらをご覧ください。