内⁠臓⁠脂⁠肪は、体重計ではなく「お腹まわり」で見る

内⁠臓⁠脂⁠肪が多いと、血圧・血糖・中性脂肪の異常が重なりやすくなります12。CTやMRIで測った内⁠臓⁠脂⁠肪は、心臓や血管の病気、糖尿病、死亡の危険の、ほかとは別の目印になっています3。お腹に脂肪がつきやすい体質を遺伝子で調べた研究でも、2型糖尿病と心臓の病気が多くなっていました4。

日本の目安は、腹⁠囲が男性85 cm、女性90 cmです15。CTで測った内⁠臓⁠脂⁠肪の面積が100 cm²を超えると、病気の危険が重なり始めます。その100 cm²に当たる腹⁠囲から決めた値です162。特定健診も、この腹⁠囲から始まります7。

腹⁠囲の目安は、国によって違う日本の値は、内⁠臓⁠脂⁠肪100 cm²から決めた

目安測る位置
日本腹⁠囲 男性85 cm・女性90 cm以上(CTの内⁠臓⁠脂⁠肪100 cm²に当たる値)立って、軽く息を吐いて、へその高さ
米国腹⁠囲 男性102 cm・女性88 cm以上(白人の基準)腰の骨の上
英国腹⁠囲÷身長が0.5以上(体格・民族によらない比)肋骨の下と腰の骨の上の中間

日本人は、日本の値と日本の測り方で。

出典:メタボリックシンドローム診断基準(2005)/日本肥満学会(Endocr J 2024)/NICE NG246/Ross R, et al. Nat Rev Endocrinol 2020

海外の記事でよく見る「男性102 cm(40インチ)・女性88 cm(35インチ)」は、米国で白人をもとに作られた値です8。日本人がこの数字で安心してはいけません。

太って見えなくても、たまっている

日本人を含む東アジアの人は、同じ体格でも内⁠臓⁠脂⁠肪が多くたまりやすいことがわかっています9。日本の健診では、BMIが普通の人でも、内⁠臓⁠脂⁠肪が多いほど血圧・血糖・脂質の異常が重なっていました10。

国の調査では、50代の男性の半分以上が、腹⁠囲85 cm以上でした。5人に1人は、BMIは普通なのに、腹⁠囲だけが基準を超えています11。

50代男性の半分以上が、腹⁠囲85 cm以上50〜59歳、腹⁠囲とBMIの組み合わせ(令和5年)

男性女性
腹⁠囲もBMIも基準未満41.6%71.1%
BMIだけ25以上2.7%8.4%
腹⁠囲だけ超え(BMIは普通)22.3%4.2%
腹⁠囲もBMIも超え33.4%16.3%

腹⁠囲の基準は男性85 cm・女性90 cm。男性の5人に1人は、BMIが普通でも腹⁠囲だけ超えています。

出典:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査報告」第20表

「体重は標準だから大丈夫」とは限りません。体重計と一緒に、巻き尺を使いましょう。健診の数値全体の読み方は、健診の「要再検査」を、引き出しにしまわないにあります。

家で測る ― 立って、息を吐いて、おへその高さ

腹⁠囲は、測る位置で数cmから十数cmも変わります12。日本の基準と比べるときは、日本の測り方で測ります1。

腹⁠囲の測り方週に1回、同じ曜日の朝に

手順ポイント
1. 立つ足をそろえ、お腹に力を入れない
2. 息を吐く軽く息を吐いたところで止める
3. へその高さで巻く床と平行に。おへそが下がっている人は、肋骨の下と腰の骨の真ん中
4. 身長と比べる腹⁠囲は身長の半分まで(170 cmなら85 cm、158 cmなら79 cm)

測る位置で、数cmから十数cm変わります。

出典:メタボリックシンドローム診断基準(2005)/NICE NG246/Hsieh SD, et al. Prev Med 2005
  • 立って、足をそろえ、お腹に力を入れない。
  • 軽く息を吐いたところで。
  • おへその高さで、床と平行に巻く。お腹が大きくおへそが下がっている人は、いちばん下の肋骨と腰の骨の真ん中で1。

もう1つの目安が、腹⁠囲は身長の半分まで、です。英国の国の指針は、腹⁠囲を身長で割った値が0.5を超えると健康上の危険が増えるとしています13。日本の太っていない人の健診でも、この0.5が、危険の重なりをいちばんよく拾いました14。身長170 cmの人なら85 cm、158 cmの人なら79 cmです。小柄な女性は、90 cmより手前で気をつけ始めてよいということです。

週に1回、同じ曜日の朝に測ると、変化がわかります。家庭用の体組成計の「内⁠臓⁠脂⁠肪レベル」は、メーカーごとの目安です。内⁠臓⁠脂⁠肪そのものとの一致はそれほど高くないので、数字の上がり下がりを見る程度にしておきましょう1516。

内⁠臓⁠脂⁠肪の測り方を比べる家で測るなら、巻き尺

測り方どこで日本の基準とのつながり
巻き尺の腹⁠囲家・健診男性85 cm・女性90 cmが、そのまま基準
腹⁠囲÷身長家0.5未満が目安(英国の指針)
家庭用体組成計の「内⁠臓⁠脂⁠肪レベル」家メーカーごとの目安。上がり下がりを見る程度に
CT・DEXA病院内⁠臓⁠脂⁠肪を直接測る(100 cm²が基準)
出典:メタボリックシンドローム診断基準(2005)/NICE NG246/Browning LM, et al. Obesity 2010/Kaul S, et al. Obesity 2012

減らしやすい脂肪。最初の目標は体重の100分の3

内⁠臓⁠脂⁠肪には、よい知らせもあります。少しの減量で、皮下脂肪より先に減るのです175。

日本で特定保健指導を受けた人を調べた研究では、体重を100分の3から100分の5減らした人で、血圧・血糖・中性脂肪・肝臓の数値など、測った11項目がすべてよくなっていました18。日本肥満学会も、最初の目標を「体重の100分の3以上」としています5。体重80 kgの人なら、2.4 kgです。国の保健指導では「腹⁠囲2 cm・体重2 kg」が目標の例です7。

体重の3%で、健診の数値がそろって動く特定保健指導を受けた3,480人(平均48歳)

体重の減りよくなった項目(11項目中)
1〜3%7項目
3〜5%11項目すべて
5%以上11項目すべて

11項目=血圧(上・下)、空腹時血糖、HbA1c、中性脂肪、HDL、LDL、AST、ALT、γ-GTP、尿酸。80 kgの人の3%は2.4 kg。

出典:Muramoto A, et al. Obes Res Clin Pract 2014;8:e466-75

10 kg、20 kg減らさなくても、健診の数値は動き始めます。

運動は、体重が減らなくても効く

内⁠臓⁠脂⁠肪をいちばん確実に減らしてきたのは、速歩き、ジョギング、自転車、水泳のような、全身を使う有酸素運動です1920。食事を変えなくても、運動だけで減っていました2021。

体重計が動かなくても、がっかりしないでください。体重が変わらなかった試験をまとめると、運動では内⁠臓⁠脂⁠肪が減り、食事制限ではほとんど変わっていませんでした22。逆に、動かないでいると、半年で内⁠臓⁠脂⁠肪が増えていたという試験もあります23。

体重計が動かなくても、内⁠臓⁠脂⁠肪は動く内⁠臓⁠脂⁠肪の変化

比べたもの内臓脂肪
運動しない(6か月)+8.6%
週約32 kmのジョギング相当(食事は変えず)−6.9%
体重が減らなかったとき:運動−6.1%
体重が減らなかったとき:食事制限−1.1%

上2行は米国の試験、下2行は研究のまとめ。別の研究を並べています。

出典:Slentz CA, et al. J Appl Physiol 2005(上2行)/Verheggen RJ, et al. Obes Rev 2016(下2行)

運動の種類による違いは、次のとおりです。

運動の種類と、内⁠臓⁠脂⁠肪・筋肉ランダム化試験とそのまとめから

運動内臓脂肪筋肉
有酸素運動(速歩き・ジョギング・水泳など)減る(いちばん一貫している)増えにくい
インターバル型(速い・ゆっくりのくり返し)減る(有酸素と差ははっきりしない。時間は短い)—
筋トレ単独でははっきりしない増える
有酸素+筋トレ減る増える
腹筋運動だけ変わらないお腹の筋持久力だけ

内⁠臓⁠脂⁠肪には有酸素運動、筋肉には筋トレ。50代は組み合わせて。

出典:Ismail I, et al. Obes Rev 2012/Chen X, et al. Obes Rev 2024/Wewege M, et al. Obes Rev 2017/Slentz CA, et al. 2011/Willis LH, et al. 2012/Vispute SS, et al. 2011
  • 速歩きのような中くらいの強さでも、短い速歩きをくり返すインターバル型でも、内⁠臓⁠脂⁠肪は減ります。両者の差は、はっきりしません2425。インターバル型は短い時間ですみます。やり方は3分速く、3分ゆっくりにあります。
  • 筋トレだけでは、内⁠臓⁠脂⁠肪がはっきり減るとは言えません。けれど、筋肉を増やすのは筋トレです2627。50代で体重を落とすなら、筋肉まで落とさないように、週2回の筋トレを組み合わせましょう。
  • 腹筋運動だけでは、お腹の脂肪は落ちません。腹筋を6週間続けた試験で、お腹の脂肪も腹⁠囲も変わりませんでした28。

ふだんの座りっぱなしを区切ることも、土台になります。座りっぱなしは、30分ごとに区切るもご覧ください。

食べ方は「特別な方⁠法」より、量と飲み物

内⁠臓⁠脂⁠肪を減らす食べ方として、低炭水化物、地中海食、16時間断食など、さまざまな方⁠法が紹介されています。

  • 方⁠法より、続けられる量の減らし方。低脂肪の食事と、地中海食に近い低炭水化物の食事を1年半比べた試験では、内⁠臓⁠脂⁠肪はどちらも同じくらい減りました。運動を足すと、さらに減りました29。
  • 食べる時間を絞る方⁠法は、同じだけ量を減らした食べ方と比べて、内⁠臓⁠脂⁠肪の減り方にはっきりした差がありません30。詳しくは16時間断食は、50代に向いているかに。
  • 甘い飲み物は、まず減らしたい。砂糖入りの炭酸飲料を毎日1 L、半年飲み続けた試験では、同じカロリーの牛乳や水と比べて、内⁠臓⁠脂⁠肪と肝臓の脂肪が増えました31。砂糖は、まず「飲み物」から減らすもご覧ください。
  • 減量中は、筋肉の材料になるたんぱく質を減らさないように。

お酒と寝不足は「増やす側」

お酒:日本の40〜79歳の男性を調べた研究で、飲む量が多い人ほど内⁠臓⁠脂⁠肪が多く、皮下脂肪とは関係がありませんでした32。飲むと、しばらくは体の脂肪が燃えにくくなります33。ただ、内⁠臓⁠脂⁠肪を減らすためにお酒を「ゼロ」にしなければならない、という試験はありません。このサイトでは、量を「グラム」で数えて減らすことを勧めています。目安はお酒は「杯」でなく「グラム」で数えるにあります。

寝不足:1日4時間の睡眠を2週間続けた試験では、食べる量が1日300 kcalほど増え、内⁠臓⁠脂⁠肪が増えました34。若い人12人の、極端な条件での試験ですが、寝不足が食欲を通してお腹に響くことを示しています。いびきが大きい、昼に強い眠気がある人は、睡眠時無呼吸も疑ってください。内⁠臓⁠脂⁠肪と重なりやすい病気です。

ストレス:ストレスとお腹の脂肪には、弱い関連がある程度です。ストレスを減らす取り組みで内⁠臓⁠脂⁠肪が減った、という試験は見つかりませんでした35。

内⁠臓⁠脂⁠肪を増やすもの・減らすものどこまで確かめられているか

内臓脂肪を…確かめ方向き
運動ランダム化試験が多数減る
食べる量を減らすランダム化試験減る
砂糖入り飲料を毎日ランダム化試験(小規模)増える
寝不足(4時間×2週)ランダム化試験(12人)増える
お酒観察研究(日本の男性)多い人ほど多い
ストレス観察研究(関連は弱い)はっきりしない
短い瞑想・休息法研究なし、または差なしわからない
出典:Ismail I, et al. 2012/Gepner Y, et al. 2018/Maersk M, et al. 2012/Covassin N, et al. 2022/Sumi M, et al. 2019/Jackson SE, et al. 2017/Daubenmier J, et al. 2011

SNSでよく見る「内⁠臓⁠脂⁠肪の常識」を確かめる

内⁠臓⁠脂⁠肪の話題は、SNSや海外のブログでもよく見かけます。主なものを、研究で確かめました。

「内⁠臓⁠脂⁠肪の常識」を研究で確かめる○=研究で支持 △=一部だけ ×=研究と合わない

よく見る話研究でわかったこと判定
腹⁠囲の目安は男性102 cm・女性88 cm日本人の目安は男性85 cm・女性90 cm×
長い有酸素運動はストレスホルモンでお腹に脂肪をためる有酸素運動が、内⁠臓⁠脂⁠肪をいちばん確実に減らしてきた×
腹筋運動でお腹の脂肪が落ちる6週間続けても、お腹の脂肪も腹⁠囲も変わらなかった×
食べる時間を絞ると内⁠臓⁠脂⁠肪が落ちる同じだけ量を減らした食べ方と、はっきりした差はない△
炭水化物を大きく減らさないと落ちない低脂肪の食事でも、同じくらい減った△
お酒はゼロにしないと落ちない多く飲む人ほど多いが、ゼロが必要とは確かめられていない△
寝不足で内⁠臓⁠脂⁠肪が増える小さな試験で、食べる量と内⁠臓⁠脂⁠肪が増えた○
5分の瞑想や休息法でお腹がへこむ体脂肪を測った研究が見つからない×
体組成計の内⁠臓⁠脂⁠肪レベル12以下なら健康メーカーの目安で、医学の基準ではない△
出典:本記事の出典1〜36

なかでも、「長い有酸素運動はストレスホルモンを増やし、お腹に脂肪をためる」という話は、研究の結果と逆です。きつい運動の最中にストレスホルモンが一時的に上がるのは本当ですが36、試験で内⁠臓⁠脂⁠肪をいちばん確実に減らしてきたのは有酸素運動でした1920。

こんなときは、受診や相談を

  • 健診で腹⁠囲が基準以上で、血圧・血糖・脂質のどれかも引っかかった:特定保健指導の案内が来たら、受けましょう。受けた人のほうが、腹⁠囲が減り、メタボから抜けやすくなっていました377。数値が「受診」の判定なら、保健指導を待たずに受診を。
  • 短い期間で、お腹だけが急にふくらむ。食べていないのに腹⁠囲が増える。体重は減るのにお腹が出てくる。脂肪ではない原因のことがあります。早めに受診してください。
  • 心臓の病気、高い血圧、糖尿病で治療中の人、胸の痛みや息切れがある人は、運動を始める前に主治医と相談を。
  • 血糖を下げる薬を使っている人が食事を大きく減らすと、低血糖になることがあります。主治医と相談してから。

まとめ

  • 内⁠臓⁠脂⁠肪は、体重計でなく巻き尺で。日本の目安は、へその高さで男性85 cm・女性90 cm。腹⁠囲は身長の半分まで。
  • 50代の男性の5人に1人は、BMIが普通でも腹⁠囲だけ超えている。
  • 内⁠臓⁠脂⁠肪は減りやすい脂肪。最初の目標は体重の100分の3。
  • 中心は有酸素運動。体重が減らなくても内⁠臓⁠脂⁠肪は減る。筋トレは筋肉を守るために足す。腹筋だけでは落ちない。
  • 食べ方は方⁠法より量。甘い飲み物を減らす。お酒は量を数え、睡眠を削らない。